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4.11. 紛争と論争の経 872. (865)

【経典文】
 " Chandānidānāni piyāni loke, Ye cāpi lobhā vicaranti loke;
 Āsā ca niṭṭhā ca itonidānā, Ye samparāyāya narassa honti ".
(4)

【正田氏訳】
 〔世尊は答えた〕「世における諸々の愛しいものは、因縁として欲〔の思い〕から〔発生しました〕──さらには、また、彼らが、貪欲〔の思い〕から、世を渡り歩くとして。諸々の願望と、諸々の目標とは、因縁としてこれ(欲の思い)から〔発生しました〕──それらが、人の未来のために有るとして」〔と〕。(4)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Chandānidānāni < chanda + nidānāni コンパウンド,連声(前語語尾aがāに変化)
  Chanda (chanda:m.comp.) 「欲〔の思い〕から〔発生しました〕」
  nidānāni (nidāna:n.pl.nom.) 「因縁として」
 piyāni (piya:a.n.pl.nom.) 「諸々の愛しいものは」
 loke (loka:m.sg.loc.) 「世における」

(b)
 Ye (ya:pron.m.pl.nom.) 「彼らが」
 cāpi < ca + api 連声(前語語尾aと後語語頭aが結合してā)
  ca (ca:conj.) 「さらには」
  api (api:indecl.) 「また」
 lobhā (lobha:m.sg.abl./m.pl.nom.) 「貪欲〔の思い〕から / 諸々の貪欲〔の思い〕ある者たちとして」
 vicaranti (vicarati:v.3.pl.pres.) 「渡り歩くとして。」
 loke (loka:m.sg.loc.) 「世を」

(c)
 Āsā (āsā:f.pl.nom.) 「諸々の願望」
 ca (ca:conj.) 「と」
 niṭṭhā (niṭṭha:f.pl.nom.) 「諸々の目標」
 ca (ca:conj.) 「とは」
 itonidānā < ito + nidānā コンパウンド
  ito (ito:indecl.comp.) 「これ(欲の思い)より〔発生しました〕」
  nidānā (nidāna:n.pl.nom.) 「因縁として」

(d)
 Ye (ya:pron.m.pl.nom.) 「それらが」
 samparāyāya (samparāya:m.sg.dat.) 「未来のために」
 narassa (nara:m.sg.dat/gen.) 「人の」
 honti (atthi:v.3.pl.pres.) 「有るとして」〔と〕。」

 

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁとciの連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n>m」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat/gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

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