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4.12. 小さなまとまりの経 889. (882)

【経典文】
 Na vāhametaṃ tathiyanti brūmi, Yamāhu bālā mithu aññamaññaṃ;
 Sakaṃ sakaṃ diṭṭhimakaṃsu saccaṃ, Tasmā hi bāloti paraṃ dahanti " .
(5)

【正田氏訳】
 わたしは、『これは、真実である』と説くことが、まさしく、ないのです──それを、愚者たちが、互いに他と敵対し、〔『これは、真実である』と〕言うとして。〔愚者たちは〕互いに自らの見解〔だけ〕を、真理と為したのですが、それゆえに、まさに、他者を『愚者である』と決め付けるのです」〔と〕。(5)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Na (na:adv.) 「ないのです。」
 vāhametaṃ < va + ahaṃ + etaṃ どちらも連声(第一語語尾aと第二語語頭aが結合してāに変化、第二語語尾ṃがmに変化)
  va (va = eva:adv.) 「まさしく」
  ahaṃ (ahaṃ:pron.1.sg.nom.) 「わたしは」
  etaṃ (etad:pron.n.sg.nom.) 「『これは」
 tathiyanti < tathiyaṃ + iti 連声(後語語頭iが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  tathiyaṃ (tathiya:n.sg.nom.) 「真実である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 brūmi (brūti:v.1.sg.pres.) 「説くことが」

(b)
 Yamāhu < yaṃ + āhu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  Yaṃ (ya:pron.n.sg.acc.) 「それを」
  āhu (āhu:v.3.pl.perf.) 「〔『これは真実である』と〕言うとして。」
 bālā (bāla:a.m.pl.nom.) 「愚者たちが」
 mithu (mithu:adv.) 「敵対し」
 aññamaññaṃ (aññamaññaṃ:adv.) 「互いに他と」

(c)
 Sakaṃ sakaṃ (sakaṃsakaṃ:adv.) 「互いに自らの」
 diṭṭhimakaṃsu < diṭṭhiṃ + akaṃsu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  diṭṭhiṃ (diṭṭhi:f.sg.acc.) 「見解〔だけ〕を」
  akaṃsu (karoti:v.3.pl.aor.) 「〔愚者たちは〕為したのですが」
 saccaṃ (sacca:n.sg.acc.) 「真実と」

(d)
 Tasmā (taṃ:pron.3.n.sg.abl.) 「それゆえに」
 hi (hi:adv.conj.) 「まさに」
 bāloti < bālo + iti 連声(後語語頭iが消失)
  bālo (bāla:a.m.sg.nom.) 「『愚者である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 paraṃ (para:a.m.sg.acc.) 「他者を」
 dahanti (dahati:v.3.pl.pres.) 「決め付けるのです」〔と〕。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

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