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4.12. 小さなまとまりの経 892. (885)


【経典文】
 " Kasmā nu saccāni vadanti nānā, Pavādiyāse kusalāvadānā;
 Saccāni sutāni bahūni nānā, Udāhu te takkamanussaranti " .
(8)

【正田氏訳】
 〔対話者が尋ねた〕「〔自らについて〕『智者である』〔と〕説いている、論争好きの者たちは、いったい、何ゆえに、諸々の真理を、種々に説くのですか。諸々の真理は、〔他者から〕聞かれたものとして、種々に多くあるのですか。あるいは、彼らは、〔自己の〕考え(自説)を、〔独善的に『真理である』と〕思い込んでいるのですか」〔と〕。(8)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Kasmā (ka:pron.n.sg.abl.) 「何ゆえに‥‥か。」
 nu (nu:adv.) 「いったい」
 saccāni (sacca:n.pl.acc.) 「諸々の真理を」
 vadanti (vadati:v.3.pl.pres.) 「説くのです」
 nānā (nānā:adv.) 「種々に」

(b)
 Pavādiyāse (pavādiya:a.m.pl.nom.) 「論争好きの者たちは」
 kusalāvadānā < kusalā + vadānā
  kusalā (kusala:a.m.pl.nom.) 「〔対話者が尋ねた〕「〔自らについて〕『智者である』〔と〕」
  vadānā (vadāna < ppr. of vadati:a.m.pl.nom.) 「説いている」

(c)
 Saccāni (sacca:n.pl.nom.) 「諸々の真理は」
 sutāni (suta:a.n.pl.nom.) 「〔他者から〕聞かれたものとして」
 bahūni (bahu:a.n.pl.nom.) 「多くあるのですか。」
 nānā (nānā:adv.) 「種々に」

(d)
 Udāhu (udāhu:indecl.) 「あるいは」
 te (so:pron.3.m.pl.nom.) 「彼らは」
 takkamanussaranti < takkaṃ + anussaranti 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  takkaṃ (takka:m.sg.acc.) 「〔自己の〕考え(自説)を」
  anussaranti (anussarati:v.3.pl.pres.) 「〔独善的に『真理である』と〕思い込んでいるのですか」〔と〕。」


[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

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