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カテゴリー「スッタニパータ 4章 八なるものの章」の記事

4.12. 小さなまとまりの経 894. (887)


【経典文】
 Diṭṭhe sute sīlavate mute vā, Ete ca nissāya vimānadassī;
 Vinicchaye ṭhatvā pahassamāno, Bālo paro akkusaloti cāha.
(10)

【正田氏訳】
 見られたものについて、聞かれたものについて、戒や掟(執着の対象に成り下がった宗教行為)について、あるいは、思われたもの(我執の思いで対象化され他者化した認識対象)について、しかして、これらのものに依存して、〔他者を〕軽侮して見る者がいます。〔断定的〕判断(自己顕示の道具としての主義・主張)に立脚して、〔他者を〕嘲笑しつつ、しかして、『他者は、愚者である、智者ではない』と言います。(10)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Diṭṭhe (diṭṭha < pp. of dassati:a.n.sg.loc.) 「見られたものについて」
 sute (suta < pp. of suṇāti:a.n.sg.loc.) 「聞かれたものについて」
 sīlavate < sīla + vate コンパウンド
  sīla (sīla:n.comp.) 「戒や」
  vate (vata:n.sg.loc.) 「掟(執着の対象に成り下がった宗教行為)について」
 mute (muta < pp. of maññati:a.n.sg.loc.) 「思われたもの(我執の思いで対象化され他者化した認識対象)について」
 vā (vā:conj.) 「あるいは」

(b)
 Ete (etad:pron.m.pl.acc.) 「これらのものに」
 ca (ca:conj.) 「しかして」
 nissāya (nissayati:v.ger.) 「依存して」
 vimānadassī < vimāna + dassī コンパウンド
  vimāna (vimāna:m.comp.) 「〔他者を〕軽侮して」
  dassī (dassin:a.m.sg.nom.) 「見る者がいます。」

(c)
 Vinicchaye (vinicchaya:m.sg.loc.) 「〔断定的〕判断(自己顕示の道具としての主義・主張)に」
 ṭhatvā (tiṭṭhati:v.ger.) 「立脚して」
 pahassamāno (pahassamāna < ppr. of pahassati:a.m.sg.nom.) 「〔他者を〕嘲笑しつつ」

(d)
 Bālo (bāla:a.m.sg.nom.) 「愚者である」
 paro (para:a.m.sg.nom.) 「『他者は」
 akkusaloti < akkusalo + iti 連声(後語語頭iが消失)
  akkusalo (akusala:a.m.sg.nom.) 「智者ではない』」(韻律または発音しやすさのためにkが重複挿入されたと思われる。)
  iti (iti:indecl.) 「と」
 cāha < ca + āha 連声(前語語尾aが消失)
  ca (ca:conj.) 「しかして」
  āha (āha:v.3.sg.perf.) 「言います。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。



(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 893. (886)


【経典文】
 " Na heva saccāni bahūni nānā, Aññatra saññāya niccāni loke;
 Takkañca diṭṭhīsu pakappayitvā, Saccaṃ musāti dvayadhammamāhu.
(9)

【正田氏訳】
 〔世尊は答えた〕「種々に多くある〔それらの〕真理は、まさしく、まさに、〔何ものでも〕ないのです(真理ではない)。世における、諸々の常住なるものは、〔『常住である』と盲信された虚妄の〕表象より他には〔何ものでもないのです〕(思い込みの産物でしかない)。しかして、〔彼らは〕諸々の見解のうちに〔自己の〕考えを〔独善的に〕想い描いて、『〔自説は〕真理である』『〔他説は〕虚偽である』と、二つの法(見解)を言います。(9)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Na (na:adv.) 「〔何ものでも〕ないのです(真理ではない)。」
 heva < hi + eva 連声(前後語尾iが消失)
  hi (hi:adv.conj.) 「まさに」
  eva (eva:adv.) 「まさしく」
 saccāni (sacca:n.pl.nom.) 「〔それらの〕真理は」
 bahūni (bahu:a.n.pl.nom.) 「多くある」
 nānā (nānā:adv.) 「〔世尊は答えた〕「種々に」

(b)
 Aññatra (aññatra:prep.) 「他には〔何ものでもないのです〕(思い込みの産物でしかない)。」
 saññāya (saññā:f.sg.abl.) 「〔『常住である』と盲信された虚妄の〕表象より」
 niccāni (nicca:a.n.pl.nom.) 「諸々の常住なるものは」
 loke (loka:m.sg.loc.) 「世における」

(c)
 Takkañca < Takkaṃ + ca 連声(前語語尾ṃがñに変化)
  Takkaṃ (takka:m.sg.acc.) 「〔自己の〕考えを」
  ca (ca:conj.) 「しかして」
 diṭṭhīsu (diṭṭhi:f.pl.loc.) 「諸々の見解のうちに」
 pakappayitvā (pakappayati = pakappeti:v.ger.) 「〔彼らは〕〔独善的に〕想い描いて」

(d)
 Saccaṃ (sacca:n.sg.nom.) 「『〔自説は〕真理である』」
 musāti < musā + iti 連声(後語語頭iが消失)
  musā (musā:adv.) 「『〔他説は〕虚偽である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 dvayadhammamāhu < dvaya + dhammaṃ + āhu 前半はコンパウンド、後半は連声(第二語語尾ṃがmに変化)
  dvaya (dvaya:a.comp.) 「二つの」
  dhammaṃ (dhamma:m.sg.acc.) 「法(見解)を」
  āhu (āha:v.3.pl.perf.) 「言います。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 892. (885)


【経典文】
 " Kasmā nu saccāni vadanti nānā, Pavādiyāse kusalāvadānā;
 Saccāni sutāni bahūni nānā, Udāhu te takkamanussaranti " .
(8)

【正田氏訳】
 〔対話者が尋ねた〕「〔自らについて〕『智者である』〔と〕説いている、論争好きの者たちは、いったい、何ゆえに、諸々の真理を、種々に説くのですか。諸々の真理は、〔他者から〕聞かれたものとして、種々に多くあるのですか。あるいは、彼らは、〔自己の〕考え(自説)を、〔独善的に『真理である』と〕思い込んでいるのですか」〔と〕。(8)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Kasmā (ka:pron.n.sg.abl.) 「何ゆえに‥‥か。」
 nu (nu:adv.) 「いったい」
 saccāni (sacca:n.pl.acc.) 「諸々の真理を」
 vadanti (vadati:v.3.pl.pres.) 「説くのです」
 nānā (nānā:adv.) 「種々に」

(b)
 Pavādiyāse (pavādiya:a.m.pl.nom.) 「論争好きの者たちは」
 kusalāvadānā < kusalā + vadānā
  kusalā (kusala:a.m.pl.nom.) 「〔対話者が尋ねた〕「〔自らについて〕『智者である』〔と〕」
  vadānā (vadāna < ppr. of vadati:a.m.pl.nom.) 「説いている」

(c)
 Saccāni (sacca:n.pl.nom.) 「諸々の真理は」
 sutāni (suta:a.n.pl.nom.) 「〔他者から〕聞かれたものとして」
 bahūni (bahu:a.n.pl.nom.) 「多くあるのですか。」
 nānā (nānā:adv.) 「種々に」

(d)
 Udāhu (udāhu:indecl.) 「あるいは」
 te (so:pron.3.m.pl.nom.) 「彼らは」
 takkamanussaranti < takkaṃ + anussaranti 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  takkaṃ (takka:m.sg.acc.) 「〔自己の〕考え(自説)を」
  anussaranti (anussarati:v.3.pl.pres.) 「〔独善的に『真理である』と〕思い込んでいるのですか」〔と〕。」


[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 891. (884)


【経典文】
 " Ekañhi saccaṃ na dutīyamatthi, Yasmiṃ pajā no vivade pajānaṃ;
 Nānā te saccāni sayaṃ thunanti, Tasmā na ekaṃ samaṇā vadanti " .
(7)

【正田氏訳】
 〔世尊は答えた〕「まさに、真理は一つです。第二のものは存在しません。それについて、人々が、覚知しているなら、論争することはないでしょう。〔しかしながら、覚知していない〕彼ら(迷える沙門たち)は、諸々の真理を、種々に、自ら〔自分勝手に、『これこそは、真理である』と〕唱えるのです。それゆえに、〔世の迷える〕沙門たちは、一つのことを説かないのです」〔と〕。(7)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Ekañhi < Ekaṃ + hi 連声(前語語尾ṃがñに変化)
  Ekaṃ (eka:num.n.sg.nom.) 「一つです。」
  hi (hi:adv.conj.) 「〔世尊は答えた〕「まさに」
 saccaṃ (sacca:n.sg.nom.) 「真理は」
 na (na:adv.) 「ません。」
 dutīyamatthi < dutīyaṃ + atthi 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  dutīyaṃ (dutīya:num.n.sg.nom.) 「第二のものは」
  atthi (atthi:v.3.sg.pres.) 「存在し」

(b)
 Yasmiṃ (ya:pron.n.sg.loc.) 「それについて」
 pajā (pajā:f.sg.nom.) 「人々が」
 no (no = na:adv.) 「ない」
 vivade (vivadati:v.3.sg.opt.act.) 「論争することは…でしょう。」
 pajānaṃ (pajānant < ppr. of pajānāti:a.m(?).sg.nom.) 「覚知しているなら」

(c)
 Nānā (nānā:adv.) 「種々に」
 te (so:pron.3.m.pl.nom.) 「〔しかしながら、覚知していない〕彼ら(迷える沙門たち)は」
 saccāni (sacca:n.pl.acc.) 「諸々の真理を」
 sayaṃ (sayaṃ:adv.) 「自ら〔自分勝手に、『これこそは、真理である』と〕」
 thunanti (thunati:v.3.pl.pres.) 「唱えるのです。」

(d)
 Tasmā (taṃ:pron.3.n.sg.abl.) 「それゆえに」
 na (na:adv.) 「ない」
 ekaṃ (eka:num.n.sg.acc.) 「一つのことを」
 samaṇā (samaṇa:m.pl.nom.) 「〔世の迷える〕沙門たちは」
 vadanti (vadati:v.3.pl.pres.) 「説か…のです」〔と〕。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 890. (883)


【経典文】
 " Yamāhu saccaṃ tathiyanti eke, Tamāhu aññe tucchaṃ musāti;
 Evampi vigayha vivādayanti, Kasmā na ekaṃ samaṇā vadanti " .
(6)

【正田氏訳】
 〔対話者が尋ねた〕「それを、或る者たちが、『真理である。真実である』と言うなら、それを、他の者たちは、『虚妄である。虚偽である』と言います。また、このように、〔世の迷える沙門たちは、自らの見解に〕執持して論争します。何ゆえに、沙門たちは、一つのことを説かないのですか」〔と〕。(6)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Yamāhu < Yaṃ + āhu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  Yaṃ (ya:pron.n.sg.acc.) 「〔対話者が尋ねた〕「それを」
  āhu (āha:v.3.pl.perf.) 「言うなら」
 saccaṃ (sacca:n.sg.nom.) 「『真理である。」
 tathiyanti < tathiyaṃ + iti 連声(後語語頭iが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  tathiyaṃ (tathiya:n.sg.nom.) 「真実である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 eke (eka:a.m.pl.nom.) 「或る者たちが」

(b)
 Tamāhu < Taṃ + āhu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  Taṃ (taṃ:pron.n.sg.acc.) 「それを」
  āhu (āha:v.3.pl.perf.) 「言います。」
 aññe (aññā:a.m.pl.nom.) 「他の者たちは」
 tucchaṃ (tuccha:a.n.sg.nom.) 「『虚妄である。」
 musāti < musā + iti 連声(後語語頭iが消失)
  musā (musā:adv.) 「虚偽である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」

(c)
 Evampi < Evaṃ + api 連声(後語語頭aが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  Evaṃ (evaṃ:adv.) 「このように」
  api (api:indecl.) 「また」
 vigayha (viggaṇhati:v.ger.) 「〔世の迷える沙門たちは自らの見解に〕執持して」(gが一つだけになっている理由は不明。韻律や発音の影響によるものでなく誤植かも?)
 vivādayanti (vivādayati:v.3.pl.pres.) 「論争します。」

(d)
 Kasmā (ka:pron.n.sg.abl.) 「何ゆえに‥‥か」〔と〕。」
 na (na:adv.) 「ない」
 ekaṃ (eka:num.n.sg.acc.) 「一つのことを」
 samaṇā (samaṇa:m.pl.nom.) 「沙門たちは」
 vadanti (vadati:v.3.pl.pres.) 「説か…のです」

 

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在(能動)分詞
 pp. past participle 過去(受動)分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 889. (882)

【経典文】
 Na vāhametaṃ tathiyanti brūmi, Yamāhu bālā mithu aññamaññaṃ;
 Sakaṃ sakaṃ diṭṭhimakaṃsu saccaṃ, Tasmā hi bāloti paraṃ dahanti " .
(5)

【正田氏訳】
 わたしは、『これは、真実である』と説くことが、まさしく、ないのです──それを、愚者たちが、互いに他と敵対し、〔『これは、真実である』と〕言うとして。〔愚者たちは〕互いに自らの見解〔だけ〕を、真理と為したのですが、それゆえに、まさに、他者を『愚者である』と決め付けるのです」〔と〕。(5)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Na (na:adv.) 「ないのです。」
 vāhametaṃ < va + ahaṃ + etaṃ どちらも連声(第一語語尾aと第二語語頭aが結合してāに変化、第二語語尾ṃがmに変化)
  va (va = eva:adv.) 「まさしく」
  ahaṃ (ahaṃ:pron.1.sg.nom.) 「わたしは」
  etaṃ (etad:pron.n.sg.nom.) 「『これは」
 tathiyanti < tathiyaṃ + iti 連声(後語語頭iが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  tathiyaṃ (tathiya:n.sg.nom.) 「真実である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 brūmi (brūti:v.1.sg.pres.) 「説くことが」

(b)
 Yamāhu < yaṃ + āhu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  Yaṃ (ya:pron.n.sg.acc.) 「それを」
  āhu (āhu:v.3.pl.perf.) 「〔『これは真実である』と〕言うとして。」
 bālā (bāla:a.m.pl.nom.) 「愚者たちが」
 mithu (mithu:adv.) 「敵対し」
 aññamaññaṃ (aññamaññaṃ:adv.) 「互いに他と」

(c)
 Sakaṃ sakaṃ (sakaṃsakaṃ:adv.) 「互いに自らの」
 diṭṭhimakaṃsu < diṭṭhiṃ + akaṃsu 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  diṭṭhiṃ (diṭṭhi:f.sg.acc.) 「見解〔だけ〕を」
  akaṃsu (karoti:v.3.pl.aor.) 「〔愚者たちは〕為したのですが」
 saccaṃ (sacca:n.sg.acc.) 「真実と」

(d)
 Tasmā (taṃ:pron.3.n.sg.abl.) 「それゆえに」
 hi (hi:adv.conj.) 「まさに」
 bāloti < bālo + iti 連声(後語語頭iが消失)
  bālo (bāla:a.m.sg.nom.) 「『愚者である』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 paraṃ (para:a.m.sg.acc.) 「他者を」
 dahanti (dahati:v.3.pl.pres.) 「決め付けるのです」〔と〕。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 888. (881)

【経典文】
 Sandiṭṭhiyā ceva na vīvadātā, Saṃsuddhapaññā kusalā mutīmā;
 Na tesaṃ koci parihīnapañño, Diṭṭhī hi tesampi tathā samattā.
(4)

【正田氏訳】
 まさしく、しかして、自らの見解によって、〔これらの者たちが〕浄白の者たちと〔成ることは〕ありません。〔もし、彼らが〕清浄の智慧ある者たちと〔成り〕、智者たちと〔成り〕、思慧ある者たちと〔成るなら〕、彼らのなかに、智慧の遍く劣る者は、誰もいなくなります。なぜなら、彼らの見解は、ともに、そのように、〔各自に〕完全であるからです。(4)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Sandiṭṭhiyā (sandiṭṭhi:f.sg.instr.) 「自らの見解によって」
 ceva < ca + eva 連声(前語語尾aが消失)
  ca (ca:conj.) 「しかして」
  eva (eva:adv.) 「まさしく」
 na (na:adv.) 「ありません。」
 vīvadātā (vīvadāta:a.m.pl.nom.) 「〔これらの者たちが〕浄白の者たちと〔成ることは〕」

(b)
 Saṃsuddhapaññā < Saṃsuddha + paññā コンパウンド
  Saṃsuddha (saṃsuddha < saṃ(pref.) + suddha(a. < pp. of sujjhati):a.comp.) 「〔もし、彼らが〕清浄の」
  paññā (pañña:a.m.pl.nom.) 「智慧ある者たちと〔成り〕」
 kusalā (kusala:a.m.pl.nom.) 「智者たちと〔成り〕」
 mutīmā (mutīmant:a.m.pl.nom.) 「思慧ある者たちと〔成るなら〕」

(c)
 Na (na:adv.) 「いなく」
 tesaṃ (so:pron.3.m.pl.dat./gen.) 「彼らのなかに」
 koci (ka-ci:pron.m.sg.nom.) 「誰も」
 parihīnapañño < parihīna + pañño コンパウンド
  parihīna (parihīna < pp. of parihāyati:a.comp.) 「遍く劣る者は」
  pañño (pañña:a.m.sg.nom.) 「智慧の‥‥なります。」

(d)
 Diṭṭhī (diṭṭhi:f.pl.nom.) 「見解は」
 hi (hi:adv.conj.) 「なぜなら‥‥からです。」
 tesampi < tesaṃ + api 連声(後語語頭aが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  tesaṃ (so:pron.3.m.pl.dat./gen.) 「彼らの」
  api (api:indecl.) 「ともに」
 tathā (tathā:adv.) 「そのように」
 samattā (samatta:a.f.pl.nom.) 「〔各自に〕完全である」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 887. (880)

【経典文】
 " Parassa ce dhammamanānujānaṃ, Bālomako hoti nihīnapañño;
 Sabbeva bālā sunihīnapaññā, Sabbevime diṭṭhiparibbasānā.
(3)

【正田氏訳】
 〔世尊は答えた〕「もし、他者の法(見解)を承認しないでいるとして、〔それによって、他者が〕愚者と〔成り〕、下等の者と〔成り〕、智慧の劣る者と成るなら、まさしく、全ての者たちが、愚者たちと〔成り〕、智慧の極めて劣る者たちと〔成ります〕。これらの者たちは、まさしく、全ての者たちが、〔各自の〕見解に固着しています。(3)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Parassa (para:a.m.sg.dat./gen.) 「他者の」
 ce (ce:conj.) 「〔世尊は答えた〕「もし」
 dhammamanānujānaṃ < dhammaṃ + anānujānaṃ 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  dhammaṃ (dhamma:m.sg.acc.) 「法(見解)を」
  anānujānaṃ (anānujānant < an(pref.) + anujānant(a. < ppr. of anujānāti):a.m.sg.nom.) 「承認しないでいるとして」

(b)
 Bālomako < Bālo + omako 連声(前語語尾oが消失)
  Bālo (bāla:a.m.sg.nom.) 「〔それによって、他者が〕愚者と〔成り〕」
  omako (omaka:a.m.sg.nom.) 「下等の者と〔成り〕」
 hoti (hoti:v.3.sg.pres.) 「成るなら」
 nihīnapañño < nihīna + pañño コンパウンド
  nihīna (nihīna:a.comp.) 「劣る者と」
  pañño (pañña:a.m.sg.nom.) 「智慧の」

(c)
 Sabbeva < Sabbe + eva 連声(後語語頭eが消失)
  Sabbe (sabba:a.m.pl.nom.) 「全ての者たちが」
  eva (eva:adv.) 「まさしく」
 bālā (bāla:a.m.pl.nom.) 「愚者たちと〔成り〕」
 sunihīnapaññā < sunihīna + paññā コンパウンド
  sunihīna (sunihīna < su(pref.) + nihīna(a.):a.comp.) 「極めて劣る」
  paññā (pañña:a.m.pl.nom.) 「智慧の‥‥者たちと〔成ります〕。」

(d)
 Sabbevime < Sabbe + eva + ime どちらも連声(第二語語頭eと語尾aが消失)
  Sabbe (sabba:a.m.pl.nom.) 「全ての者たちが」
  eva (eva:adv.) 「まさしく」
  ime (ayaṃ:pron.m.pl.nom.) 「これらの者たちは」
 diṭṭhiparibbasānā < diṭṭhi + paribbasānā コンパウンド
  diṭṭhi (diṭṭhi:f.comp.) 「〔各自の〕見解に」
  paribbasānā (paribbasāna < ppr. of parivasati:a.m.pl.nom.) 「固着しています。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 886. (879)

【経典文】
 Evampi viggayha vivādayanti, Bālo paro akkusaloti cāhu;
 Sacco nu vādo katamo imesaṃ, Sabbeva hīme kusalāvadānā " .
(2)

【正田氏訳】
 また、このように、〔世の自称智者たちは、自らの見解に〕執持して論争します。しかして、『他者は、愚者である、智者ではない』と言います。いったい、これらの者たちの、どの論が、真理なのですか。まさに、これらの者たちは、まさしく、全ての者たちが、〔自らについて〕『智者である』〔と〕説いています」〔と〕。(2)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Evampi < Evaṃ + api 連声(後語語頭aが消失、前語語尾ṃがmに変化)
  Evaṃ (evaṃ:adv.) 「このように」
  api (api:indecl.) 「また」
 viggayha (viggaṇhati:v.ger.) 「〔世の自称智者たちは、自らの見解に〕執持して」
 vivādayanti (vivādayati:v.3.pl.pres.) 「論争します。」

(b)
 Bālo (bāla:a.m.sg.nom.) 「愚者である」
 paro (para:a.m.sg.nom.) 「『他者は」
 akkusaloti < akkusalo + iti 連声(後語語頭iが消失)
  akkusalo (akkusala < a(pref.) + kusala(a.) 内連声(kが挿入):a.m.sg.nom.) 「智者ではない』」
  iti (iti:indecl.) 「と」
 cāhu < ca + āhu 連声(前語語尾aが消失)
  ca (ca:conj.) 「しかして」
  āhu (āhu:v.3.pl.perf.) 「言います。」

(c)
 Sacco (sacca:a.m.sg.nom.) 「真理なのです」
 nu (nu:adv.) 「いったい」
 vādo (vāda:m.sg.nom.) 「論が」
 katamo (katama:a.m.sg.nom.) 「どの‥‥か。」
 imesaṃ (imaṃ:pron.m.pl.gen.) 「これらの者たちの」

(d)
 Sabbeva < Sabbe + eva 連声(後語語頭eが消失)
  Sabbe (sabba:a.m.pl.nom.) 「全ての者たちが」
  eva (eva:adv.) 「まさしく」
 hīme < hi + ime 連声(前語語尾iと後語語頭iが結合してīに変化)
  hi (hi:adv.conj.) 「まさに」
  ime (ayaṃ:pron.m.pl.nom.) 「これらの者たちは」
 kusalāvadānā < kusalā + vadānā
  kusalā (kusala:a.m.pl.nom.) 「〔自らについて〕『智者である』〔と〕」
  vadānā (vadāna < ppr. of vadati:a.m.pl.nom.) 「説いています」〔と〕。」

[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。


(文責:脇坂)

4.12. 小さなまとまりの経 885. (878)

【経典文】
 " Sakaṃsakaṃdiṭṭhiparibbasānā, Viggayha nānā kusalā vadanti;
 Yo evaṃ jānāti sa vedi dhammaṃ, Idaṃ paṭikkosamakevalī so.
(1)

【正田氏訳】
 〔対話者が尋ねた〕「互いに自らの見解に固着している者たちは、〔自らの見解に〕種々に執持して、〔自らについて〕『智者である』〔と〕説きます。『彼が、このように知るなら、彼は、法(真理)を知っている』『このことを非難している彼は、全一者ではない』〔等々と〕。(1)

【文法的分解と単語訳】
(a)
 Sakaṃsakaṃdiṭṭhiparibbasānā < Sakaṃsakaṃ + diṭṭhi + paribbasānā 後ろの+はコンパウンド
  Sakaṃsakaṃ (sakaṃsakaṃ:adv.) 「〔対話者が尋ねた〕「互いに自らの」
  diṭṭhi (diṭṭhi:f.comp.) 「見解に」
  paribbasānā (paribbasāna < ppr. of parivasati:a.m.pl.nom.) 「固着している者たちは」

(b)
 Viggayha (viggaṇhati:v.ger.) 「〔自らの見解に〕執持して」
 nānā (nānā:adv.) 「種々に」
 kusalā (kusala:a.m.pl.nom.) 「〔自らについて〕『智者である』〔と〕」
 vadanti (vadati:v.3.pl.pres.) 「説きます。」

(c)
 Yo (ya:pron.m.sg.nom.) 「『彼が」
 evaṃ (evaṃ:adv.) 「このように」
 jānāti (jānāti:v.3.sg.pres.) 「知るなら」
 sa (so:pron.3.m.sg.nom.) 「彼は」
 vedi (vedeti:v.3.sg.aor.) 「知っている』」
 dhammaṃ (dhamma:m.sg.acc.) 「法(真理)を」

(d)
 Idaṃ (idaṃ:pron.n.sg.acc.) 「『このことを」
 paṭikkosamakevalī < paṭikkosaṃ + akevalī 連声(前語語尾ṃがmに変化)
  paṭikkosaṃ (paṭikkosant < ppr. of paṭikkosati:a.m.sg.nom.) 「非難している」
  akevalī (akevalin:a.m.sg.nom.) 「全一者ではない』〔等々と〕。」
 so (so:pron.3.m.sg.nom.) 「彼は」


[備考:略字・記号等]
 m. masculine 男性
 n. neutral 中性
 f. feminine 女性
 pron. pronoun 代名詞
 a. adjective 形容詞
 num. numeral 数詞
 ppr. present participle 現在能動分詞
 pp. past participle 過去受動分詞
 grd. gerundive 義務分詞,未来受動分詞
 v. verb 動詞
 indecl. indeclinable 不変化詞(不変語):副詞,接続詞,間投詞,前置詞を含む総称
 adv. adverb 副詞
 conj. conjunction 接続詞
 interj. interjection 間投詞
 prep. preposition  前置詞
 pref. prefix 接頭辞
 suf. suffix 接尾辞
 1. the first person 一人称
 2. the second person二人称
 3. the third person三人称
 sg. singular 単数
 pl. plural 複数
 nom. nominative 主格
 acc. accusative 対格
 inst. instrumental 具格
 abl. ablative 奪格
 dat. dative 与格
 gen. genitive 属格
 loc. locative 処格
 voc. vocative 呼格
 comp. compound コンパウンド(複合詞,合成語)であり、次の語句と、語基等のまま(数・格なし)で結合していることを表す。
 pres. present 現在
 aor. aorist アオリスト
 pf. perfect 完了
 fut. future 未来
 imper. imperative 命令形
 opt. optative 願望法
 cond. conditional 条件法
 ger. gerund 連続体
 inf. infinitive 不定体
 pass. passive 受動動詞
 caus. causative 使役動詞
 denom.  denominative 名動詞
 med. medium 為自言(middle)(refl. reflective 反照態)

 < 二語以上が結合している場合の構成や、単語の成り立ちを後ろに記す。
  (例:「kuhiñci < kuhiṁ + ci 連声」は、kuhiñciはkuhiṁとciの連声という意味)
  (例:「sata < pp. of sarati」は、sataはsaratiの過去受動分詞であるという意味)
 > 解釈や修飾語句による性の変化を記す。
  (例:「n.>m.」は、本来中性だがここでは男性の曲用をしているという意味)
 / 他にも可能な訳や解釈を後ろに記す。
  (例:「dat./gen.」は、与格と属格両方の可能性があるという意味)

 なお、タイトルに記している二つの偈番号は、一つめが底本であるタイ版[国際版]パーリ三蔵(第六結集版を改訂したもの)に記載されている偈番号で、二つめの括弧内の番号がPTS版の偈番号です。

(文責:脇坂)

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