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カテゴリー「パーリ語について」の記事

パーリ語の教材と参考資料


■ はじめに

 関西パーリ語実習会(@神戸ダンマサークル)では、現在、スッタニパータ4章(以前は5章)のパーリ語* 原文を教材に、パーリ語文法解析学習をしています(ちなみに同経典の内容についての学び・意見交換は同日午後にしております)。

 この記事では、新たに参加される方、今後参加をご検討の方、または、パーリ語に少しでも興味関心のある方々のために、当勉強会がどのような教材や資料で学んでいるかについて紹介してみたいと思います。利用させていただいている貴重な辞書・文法書・註釈・翻訳書・その他を執筆・作成された方々にこの場を借りて深く感謝申し上げます。

 なお、遠方や日程的なご都合で勉強会に参加できない方でも、自主的に、これらの教材を用いて予習し、学習結果のブログ記事で答え合わせして復習してみる、という形でパーリ語学習を続けていくことができるのではないかとも思います。もしもそういう方が当ブログ記事をご活用くださいましたら、誠にありがたく存じます。

 パーリ語の経典を一字ずつ吟味し、意味を考えながら丁寧に読むと、ブッダの教えを直に原典から主体的に学ぶ喜びを感じることができると思います。参加・遠隔いずれの形でもぜひご一緒にパーリ語を学んでみませんか。よろしくお願いします。

 * 備考:パーリ語について
  (「パーリ語」@「日本テーラワーダ仏教協会」https://j-theravada.net/world/keyword/keyword-01/
  (「パーリ語」@ 「コトバンク」 https://kotobank.jp/word/パーリ語-116896
  (「パーリ文字」@「地球ことば村・世界言語博物館」http://www.chikyukotobamura.org/muse/wr_seasia_37.html


■ 【基本教材】

 参加者全員が利用・持参しているもの、教科書的位置づけの4点です。

 ● パーリ原文=『スッタニパータ(suttanipātapāḷi)』

当勉強会で底本として利用させていただいているのは、タイ版(国際版パーリ三蔵)(第六結集版の改訂)です。
同版の詳細については、下記の正田氏の電子書籍内の序言をご参照ください。
なお、同書籍の中にそのパーリ語原文も収録されています。

 ● 和訳=正田大観『小部経典 第一巻 (パーリ語原文付)~正田大観 翻訳集
          ブッダの福音~ Kindle版』Evolving、2015年

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00UWBMHXK/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i5

 ● 辞書=水野弘元『パーリ語辞典〔増補改訂版〕』春秋社、2005年

 ● 文法書=水野弘元『パーリ語文法』山喜房佛書林、1955年

 基本4点セットのうち、原文と和訳は正田氏から順次プリントを頂いており、辞書と文法書は各自購入しています。

 予習は、正田氏の和訳(原文一語一語の語義・語順・文法にできる限り忠実に翻訳されている逐語訳で、文法解析の学習や原典の正確な理解に最適で貴重な翻訳だと存じます)を手がかりに、各自担当の1偈(現状は全員で毎月5偈予習しています)のパーリ語文を一語ずつ分解し、その品詞や性・数・格・人称・態・法・時などを調べてきます。そして当日、正田氏のガイドのもと、発表・意見交換・答え合わせをして学んでおります。

 調べてみたけど分からないというところは分からないでOK、というスタンスです。また、複数の可能性が等しく考えられる場合は、決め付けない、両論併記、という態度でもあります。学校の授業ではありませんので、気楽に取り組んでおります。


■ 【発展学習】

 いわば発展学習向けとして、筆者が把握している範囲内で、一部参加者が参照していると思われる文献や情報源を紹介します。非公式・参考書的な位置づけと言えます。

※注意 日本語以外の言語のサイトへのアクセスやダウンロード・インストールする必要があるものもありますので、参照・利用される際には、慎重な操作と確認のもと自己責任で行ってくださいますようお願い申し上げます。

〔パーリ原文〕

 ● 『スッタニパータ』Pali Text Society(略称PTS)版

ロンドンの「パーリ聖典協会」発行。
● 例えば、「Internet Archive」というサイト(https://archive.org/)に、Sutta-Nipāta by Dines Andersen and Helmer Smithという書籍のコピーあり。https://archive.org/details/in.gov.ignca.3113にて閲覧またはダウンロード可。
● または、「Sirimangalo.org」というサイト(https://www.sirimangalo.org/)にもあり。Sutta-Nipata by Dines Andersen and Helmer SmithのURLは、https://static.sirimangalo.org/pdf/suttanipata.pdf。個人的には、こちらのサイトのPDFファイルのほうが、背景が白色になっているため見やすく感じます。

 ● 『スッタニパータ』Vipassana Research Institute(略称VRI)版

第六結集版。ミャンマー版と言っても良いかと思います。
● VRIのPāḷi Tipiṭakaというサイト(https://tipitaka.org/)にあり。ローマ字表記のものは、トップページ左側項目欄の「Roman」の「Web」をクリックすれば閲覧可で、同じく「PDF」をクリックすればPDFファイルをダウンロード可。スッタニパータへは、Tipiṭaka(Mūla)(三蔵(根本))→Sutta Piṭaka(経蔵)→Khuddaka Nikāya(小部)→Suttanipātapāḷi(スッタニパータ=経集)と辿ります。)
● この経典をオフラインで閲覧することができるWindowsパソコン用の経典ソフト「Chaṭṭha Saṅgāyana Tipitaka Version 4.0 (CST4)」もあります。URLは、https://www.tipitaka.org/cst4。「Download the CST4 installer (40.9 MB)」をクリックして、ダウンロード、インストールする必要あり。)
● おそらくこのVRI版の経典を読めるAndroid用アプリが「Android Tipitaka」(Googleのアプリストア‎にて、提供元 Sirimangalo International)です。スッタニパータへの辿り方は、Suttanta→Mūla→suttanipātaです。各章への行き方は、アプリ上部の○iマークをタップし、例えば4章の各経ならaṭṭhakavaggo:………をタップします。)
● おそらく第六結集版の経典を読めるiPhone,iPad用アプリが「Chaṭṭha Saṅgīti Piṭaka」(AppleのApp Storeにて、提供元 Nyi Aye)です。ローマ字表記は、最初の画面の下部の右端のボタンからRomanを選択して他の言語をオフにします。スッタニパータへの辿り方は、Khuddakanikāya→Suttanipāta Pāḷiで、例えば4章へ行くなら、画面下部をタップしてから、右端のメニューボタンをタップして、4. Aṭṭhakavaggoの中から、各経を選びます。なお、最初の画面に戻るには、画面下部をタップし、左上の < Books、そして、< Nikāyaをタップします。

これらは、そもそも勉強会で使わない別版の経典ですが、参照する意味としては、例えばタイ版よりも単語が分かち書きになっていて単語分解のヒントになったり、微妙に違う綴りが(時には数種類も)書いてあって、単語特定のヒントになったりする場合があります。ただし、そもそも別版ですので、ごくまれですが、同じ偈文の中で、一部分、まったく異なる単語が使われている場合もある、ということにご留意ください。


〔経典和訳、註釈和訳、経典等の解説〕

 ● 中村元訳『ブッダのことば ── スッタニパータ』岩波文庫、1958年

 ● 村上真完、及川真介訳『仏のことば註〈1〉~〈4〉──  パラマッタ・ジョーティカ ── 』春秋社、2009年

 ● 宮坂宥勝訳『ブッダの教え スッタニパータ』、法蔵館、2002年

 ● アルボムッレ・スマナサーラ長老『経典解説 スッタニパータ 第五章「彼岸道品」』サンガ、2018年

 ● 正田大観『ブッダのことば (上) ──  第一部 義足経精読 正田大観著作集 ブッダのまなざし Kindle版』Evolving、2015年
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 ● 正田大観『ブッダのことば (下) ──  第二部 波羅延経精読 正田大観著作集 ブッダのまなざし Kindle版』Evolving、2015年
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 ● 正田大観『ブッダのまなざし(上)──  第一部 ブッダその真実の教え 正田大観著作集 ブッダのまなざし Kindle版』Evolving、2016年
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 ● 正田大観『ブッダのまなざし(下)──  第二部 対話するブッダ 正田大観著作集 ブッダのまなざし Kindle版』Evolving、2016年
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〔辞書〕

 ● 雲井昭善『パーリ語佛教辞典』〔改訂新版〕山喜房佛書林、2008年

 ● 村上真完、及川真介『パーリ仏教辞典 ──  仏のことば註 パラマッタ・ジョーティカ ──  付篇、パーリ聖典スッタ・ニパータ註、索引・辞典』春秋社、2009年

これらの辞書は高額かつ希少で、普通の近隣図書館にはおそらく所蔵されておらず、都道府県立や大都市立の公共図書館か仏教・人文系学部のある大学の図書館で館内閲覧のみ利用可だと思われます。

 ● The Pali Text Society's Pali-English dictionary(https://dsalsrv04.uchicago.edu/dictionaries/pali/

PTSのパーリ語英語辞書をネット上で検索できます。

 ● Pāḷi Dictionary(https://palidictionary.appspot.com/ または http://dict.sutta.org/

数多くのパーリ語各言語辞書を複数同時にネット上で検索できます。
前者のURLのサイトのほうが、検索ボックス横のKeyboradボタンを押せば、āやṃなども楽に入力できて、便利です。

 ● Pali Canon E-Dictionary Version 1.94 (PCED)(http://dhamma.sutta.org/pali-course/Pali-Chinese-English%20Dictionary.html

Windowsパソコンにインストールして使うパーリ語電子辞書ソフト。
上記Pāḷi Dictionaryというサイトと同じデータだと思います。
 「Download PCED 1.94 Full Version(143M)」の下の表の「下载点一」または「下载点二」をクリックし、ダウンロードした圧縮ファイル(0901-pali-han-dict.zip)をダブルクリックして解凍し、「PECD194」という名前のフォルダ(約550MB)の中の「pced_EN.exe」をダブルクリックするとソフトが起動します(ただし1.9.3.0.版と出ますが)。
 このソフトには、経典を別ウィンドウで表示できる機能もあり、その文中の単語をダブルクリックすると、自動的に辞書検索する機能もあります(ただし、そのままの綴りでの機械的な検索になるので、原形綴りでない場合、見出し項目にたどり着けないことが多く、結局は自分で原形綴りを推測して再検索せざるを得ないと思いますが)。
 Android版もありますが、公式のGoogleのアプリストアからでなくここのサイトからダウンロード・解凍した非公式のapkファイルからのインストールであること、辞書フォルダを手動で配置する必要があることから、導入のハードルは高めかもしれません。筆者の非力なスマホ(Android 5.1)では一応、遅い動作ながらも動きました。
 Linux版もあるようですが、筆者は検証していません。

 ● Pali-English Dictionary

Android用。Googleのアプリストア‎にて、提供元 Chandana Dematapitiya。
the Concise Pali-English Dictionary by A.P.Buddhadatta Mahatheraという辞書に基づいた、パーリ語→英語の辞書アプリ。
なお、インストールすると「Pali Dictionary」という名称になります。

 ● Pali-English - Pali English & English Pali dictionary

iPhone,iPad用。AppleのApp Storeにて、提供元 Khang Nguyen。
パーリ語→英語だけでなく、英語→パーリ語でも引くことができる辞書アプリ。
おそらく、辞書データは上記と同じと思われます。

 

〔文法書、各種経典文法解析〕

 ● 木岡治美『読めばわかるパーリ語文法』山喜房佛書林、2016年

 ● 佐々木現順、野々目了『基本パーリ語文法』清水弘文堂、1977年

 ● 長井真琴『独習巴利語文法』山喜房佛書林、1959年

 ● Wilhelm Geiger著、伴戸昇空訳『Pāli : 文献と言語』Abhidharma Research Institute、1987年

これらの書籍も恐らく普通の近隣図書館には蔵書がなく、都道府県立や大都市立の公共図書館か仏教・人文系学部のある大学の図書館であれば所蔵されていると思われます。

 ● 木岡治美『日常読誦経典 パーリ語ノート』〔改訂版(第二版)〕日本テーラワーダ仏教協会、2019年

 ● 光明寺経蔵(https://komyojikyozo.web.fc2.com/

ご覧くださり、ありがとうございました。ご参考になれば幸いに存じます。
お幸せでありますように。生きとし生けるものが幸せでありますように。

(文責:脇坂)

パーリ語の音節と韻律 (学習ノート)


■ 1.はじめに

 パーリ語の韻文では、時々、詠んだり聴いたりするときに心地良い一定のリズムのパターン(=韻律)に合わせるため、本来の文法どおりの発音(綴り)が書き換えられていること(母音の長音化/短音化、子音の追加/脱落)があります。ですので、韻律がわかると、本来の発音(綴り)の解明と文法解析学習に役立つことがあるかもしれません(「必ず役立ちます」「実際役立ちました」と断言できるほどの学習経験が正直なところ筆者にはまだありません)

 パーリ語の韻律は、各行(pāda)を構成する音節の数、それが長音節か短音節か、または、音価の数、音節群の数によって規定されます。……(この後、順に詳説)

 ※〈感謝と弁明〉

 こんな感じで書き始めてみましたが、実は当初は、韻律の解説を読んでも全然理解できませんでした。音節の分け方がまったく分かっていないためだと思い、言語における音節というもの自体を扱う書籍を読むところから始めました。また、パーリ語(やサンスクリット語)における韻律を詳しく説明してそうな文献も探しました。まだまだ数多くの分からない点があるのですが、勉強中のノートを整理してみたのがこの記事です。何かと言い訳の多いノートの公開は恥ずかしい限りですが、ご参考になれば幸いです。
 いつもパーリ語をご指導いただいている正田大観氏に改めてこの場を借りて深く感謝申し上げます。また、今回、参照させていただいた言語学やパーリ語に関する諸先生のご研究にも深く感謝申し上げます。ただ、このノートには、誤解・誤読・誤訳、憶測による間違い、説明不足が含まれている恐れがあり、この点は当然ながら筆者の責任です。
 なお、スマホやタブレットでご覧の場合、意図どおりのレイアウトで表示されない部分があります。ご了承ください。

 ※〈各章の構成と概要、必要最小限の読む範囲や順序〉

■ 1.はじめに(現在ここ)
■ 2.言語全般における音韻論の用語
■ 3.パーリ語の音節の区切り方
■ 4.音節の具体例
■ 5.長音節と短音節の実例パターン
■ 6.長音節と短音節の自己流判別法~カナ発音にもとづいて~(参考程度)
■ 7.音価や音節の自己流数え方・判別法~カナ発音にもとづいて~(参考程度)
■ 8.パーリ語の韻律の種類
■ 9.韻律の混用
■ 10.韻律に合わせるための発音(綴り)変化
※ 参考文献

  見出し番号2~7が、韻律の話に入る前提としての「音節等」の話、8~10が「韻律」の話になっています。さらに細かく言えば、2~7のうち、2は言語全般、3~7がパーリ語限定の話です。

 このように、韻律の話に入るまでに、たくさんの見出しを費やして(同じ事柄をあの手この手で重複して)説明しておりますが、もし最低限読めばよい範囲を問われたら、「まず7を読んでいただき、4で具体例を確認するぐらいで十分」とお答えしようと思います。

 ただし、7や6は、素人の私が自己流でまとめた経験的法則の提示ですので、読者のタイプやレベルによっては、「実践重視の方は4、5を」、「信頼できる参考文献に書いてある原理的説明を読みたい方はまずは3、そして4を」、「のろまな理解の私(筆者)の試行錯誤(よく言えば、多面的考察)の経過記録にゆっくりお付き合いいただける方は2から順に」などとご案内しようとも思います。

 韻律の話の8~10は、普通にそのままの順にお読みいただければと思います。


■ 2.言語全般における音韻論の用語

注:主に参照したのが英語学の音韻論の和文献ですので、言語全般に当てはまる記述なのか英語または日本語にのみ当てはまる記述なのかの判読に失敗し、誤解している部分が含まれている恐れがあります。

 まず、言語の単位に関する、統語論*や形態論*の用語と音韻論*の用語の対応関係を示します。そして以下で、音韻論の3つの小さい単位(音節、音価、音素)を説明していきます。

* 統語論:「言語学の一分野。文法論の一領域で,文がどのような構造で成り立っているかを明らかにしようとするもの」(引用者備考:統辞論、構文論とも言う)。
* 形態論:「文法論の一部門。単語などの形態変化を対象とする研究部門」(同備考:語形論とも言う)。
* 音韻論:「構文論・意味論などと並ぶ,言語学の一分野。言語音の機能や体系・構造を研究する」(いずれもスーパー大辞林)。

 統語論,形態論: 文 - 節-句 -  語 - 形態素*
 音韻論    :発話 - 韻律句 - 韻律語 - 韻脚* - 音節 - 音価 - 音素


* 形態素(morpheme)とは、「意味を持つ,または統語構造上独立の機能を果たす最小の言語単位で,語またはその一部分;例 the, write, または waited の-ed.」(ランダムハウス英語辞典)、または、「意味をもつ最小の言語単位。〈ホンバコ〉という語は,〈ホン〉と〈バコ〉という意味をもつ最小単位,すなわち形態素に分けられる」(世界大百科事典第2版)。

* 韻脚(foot)とは、「詩脚, 音歩《詩句を構成する韻律 (rhythm) の単位で, 古典詩では音節の長短, 英詩ではその強弱の種々な組合わせからなる…》」(新英和大辞典第6版)。

【 音 節 】
 音節(syllable,シラブル)とは、母音(もしくはそれに準ずる流音や鼻音)を中心とする音のまとまりのこと。単なる物理的な音の結合ではなく、有機的なまとまりの単位。

 大まかに言えば、音節は、口を開閉する動作に対応しています。各言語を発声するときに1回の口の開閉で作り出されるものが1音節と数えられます。

 より小さな単位の、音素や音価(言語ごとにそれらの種類や数は異なる。日本語では母音5個と子音16個計21個を用いる)の有機的な組み合わせ型(パターン)とも言えます。

 音節の基本型は、子音(consonant)+母音(vowel)(略語で書けばcv)です。次によくある形が、子音を伴わない型(v)や、前後に子音を伴う型(cvc)です。言語によっては、子音が重なる(=子音結合の)もっと複雑な型もあります(例えば、英語なら、母音の前後とも3個(活用語尾なども加えると4個)の子音結合を許容しています。すなわち、cccvc(例street /stri:t/)やcvcccc(例texts /téksts/)でも1音節です)。

 そして、子音結合の中では、母音に近い位置には母音性が高い子音(半母音の/j/,/w/,流音の/l/,/r/,鼻音の/n/,/m/,/ŋ/。パーリ語ならそれぞれ半母音(y,v),流音(r,l,ḷ),鼻音(ṅ,ñ,ṇ,n,m))しか来ないという制約があります。ちなみに、母音性が高い順に並べると、a > e,o > i,u > 半母音 > 流音 > 鼻音 > 摩擦音(有声>無声) > 閉鎖音(有声>無声)となります。

 音節は、その音節に含まれる音の軽重で、重音節と軽音節に分けられます。例えば、長母音をもつ音節は重音節です。ただし、本稿では、通俗的な表現かもしれませんが、重音節を長音節、軽音節を短音節と呼ぶことにしたいと思います。

 なお、母音で終わる音節を開音節といい、子音で終わる音節を閉音節といいます。

 音節単位で表現されている文字が、中国語の漢字やハングルとされます。
 (例)
  你好(/Nǐ|hǎo/ 「こんにちは」)         ⇒  2音節
  김치(/gim|chi/「キムチ」)           ⇒  2音節
  안녕하세요(/an|nyeong|ha|se|yo/「こんにちは」) ⇒ 5音節

【 音 価 】
 音価(mora,モーラ,音長,音量とも言う)は、音節が有する音の長さを表す単位。時間的な単位です。昔から、人が瞬きをする1回の時間が1音価とされます。

 1音節は1音価か2音価になります。
  vの1音節  → vのままで、1音価
  cvの1音節   → cvのままで、1音価
  cvcの1音節  → cvとcにわけて、2音価
  cvivi(長母音)の1音節   → cviとviにわけて、2音価
  cvivj(二重母音)の1音節 → cviとvjにわけて、2音価

 音価単位で表現されている文字が、カナ、アラビア語などとされます。そこでは、原則、1音価1字ですが、ただし、カナでは、例外的に、拗音(「き,ぎ,し,じ,ち,に,ひ,び,ぴ,み,り」に「ゃ,ゅ,ょ」が添うものや「くゎ」など)は1音価で2字です。
 (例)
  な/ら(cv/cv)     ⇒ 2音価
  きょ/う/と(cv/v/cv)   ⇒ 3音価
  か/ん/さ/い(cv/c/cv/v) ⇒ 4音価
  お/お/さ/か(v/v/cv/cv) ⇒ 4音価
 (参考:上記の語句を音節単位で分けて数えると…)
  na|ra   ⇒ 2音節
  kyo:|to   ⇒ 2音節
  kan|sai     ⇒ 2音節
  oo|sa|ka   ⇒ 3音節

【 音 素 】
 音素(phoneme,フォニーム,分節音,音とも言う)は、音韻論における音の最小単位

 機械で測定される物理的な音ではなく、人が耳で聞き取って脳で意味を区別する抽象的な概念としての1音と言えます。

 音素単位で表現されている文字が、ローマ字とされます。そこでは、原則、1音素1字(例えばseven /sévən/)ですが、例外的に、音素なしの字もありますし(例えばoneやfiveのe)、2音素に1字の場合もありますし(例えばsixのx /ks/)、1音素に2字の場合もあります(例えばthreeのth /θ/)。


■ 3.パーリ語の音節の区切り方

 パーリ語の1音節は原則、1つの母音を中心に(その前and/or後に原則1つずつの子音までで)構成されます。もし母音が連続していれば2つの音節に分けます。つまり、音節のパターンとしては、主に次の4つです。
 1.「母音」      (v)
 2.「子音+母音」   (cv)
 3.「母音+子音」   (vc)
 4.「子音+母音+子音」(cvc)
(例外的に、5.「2個の子音結合を含む形」(vcc,ccv,cvcc,ccvc)もあると思います。)

 一方、パーリ語には2音価(mora。パーリ語でmattā)の法則(原則3音価以上は認められないという法則)があるため、パーリ語の音節のパターンは次の3つのいずれかだとも言えます。
 1.「短母音で終わる形」         (v,cv)(1音価)
 2.「長母音で終わる形」         (v,cv)(2音価)
 3.「短母音の後に子音が1つ来て終わる形」(vc,cvc)(2音価)
(例外的に、3音価以上の音節の例もあります(例えばbrāhmaṇaのbrāh)が、韻律上は2音価と解するそうです。)

*他にも、「半母音のyやvは、iやuと解すべき場合がある」、「連声によって連結している母音は、元に戻して音節を数える場合がある」、「語頭のaがeやoの後ろで落ちたとき、元に還元する場合がある」という法則があるそうです。

(法則を理解して適用するというのは、個人的には正直難しく感じましたので、当初は、拾い集めた実例パターンから見分けたり、素人的カナ発音判別法を考えたりして(それぞれ弱点があるので併用で)やってきました。それらを、一応参考程度に下記4~7で紹介したいと思います。)


■ 4.音節の具体例

 パーリ語の音節の分け方を、具体的な例を見ながら勉強しようと思い、各参考文献(特にĀnandajoti Bhikkhu ed. "Dhammapada (KN 2)"に多くを学びました)に載っていた(本来は韻律の)分析例を抜き書きし、その語句や文中に(韻律の分析をヒントに自分なりにたぶんここで区切るのだろうと判断した(ゆえに間違っているかもしれませんが))音節の区切りを書き加えてみました。文意と全く関係なく一部分を切り出しています。選択基準として、簡単なものだけでなく、あえて音節の区切りが難しそうな綴りを参考文献で探し、解釈を見て考え悩んだりして勉強になったものも多く含めました(それゆえ余計に、正しいのか不安ですが)。

 なお、行末の音節はほぼいつも(若干例外あり)、実際の音価に関わらず、韻律上、長音節として扱われますが、ここでは学習的観点から実際の長・短の記号を付しています。

※〈用語と記号〉
 参考文献を見ますと、おそらく正式には、長音節は−という記号で表し、短音節は ⏑や◡や◡ という記号で表しますが、ここでは独断で、パソコン入力上の簡便さや汎用性(フォント対応度)の点から、簡易的に、モールス信号の符号を真似て、

 長音節は-、短音節は・で表したいと思います

 各記号は文字の上の行に付しました(注:文字幅の違いで、記号とその音節との位置は少々ズレていると思います)。

 その他、語中の縦棒 | の記号は、筆者が推測で挿入した音節の区切り位置を表します(そのため間違っているかもしれません)。なお、語と語はたいてい別の音節に分かれていまして、語と語の間には、元から半角空白が入っていますので、縦棒記号は挿入しないでおきました(ただし、語尾と語頭がくっついて1つの音節を作る例外的な場合のみ、半角空白の代わりにハイフン-を入れ、備考を付しました)。(ダはダンマパダ)

 スマホの場合、画面を横向きにしてご覧ください。

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e|tad pa|ti se|nā bud|dha ka|ro|ti met|tā et|tā|va|tā

・ - ・  - - -  - ・ - ・・-・・  -・
vi|mok|kha dham|mā|naṃ bhik|khu|no pa|ti|lī|na|ca|ras|sa

- ・ ・  -・ - ・ ・ -  - ・  ・ ・ ・ - -
gac|cha|ti hon|ti brāh|ma|ṇa Taṃ ve pa|sa|ha|ti mā|ro

- - ・ -  ・ ・ ・ -    --  ・ -  -  ・・ -
Ak|khoc|chi maṃ a|va|dhi maṃ  Añ|ñā hi lā|bhū|pa|ni|sā

- - ・ -  -・  ・  -  ・  -  ・  - -  -   - ・
Se|lo ya|thā e|ka|gha|ṇo  Ni|dhā|ya daṇ|ḍaṃ bhū|te|su

- ・- - - ・ -  -  - -  ・  - - -   -   -
Ak|kha|rā|naṃ san|ni|pā|taṃ  Gam|bhī|ra|pañ|ñaṃ me|dhā|viṃ

・ -  ・ - -   -・・ -  ・   - -    - ・ ・
Ra|jo ca jal|laṃ uk|ku|ṭi|kap|pa|dhā|nam  dvā|da|sa

- - ・  -   - ・ ・ -・ -  ・    -  - ・
Puc|chā|mi taṃ Go|ta|ma bhū|ri|pañ|ña  dus|sīl|ya

・ - ・-  -・ -  -  ・ -・  -  ・
Ka|thaṃ|ka|ro sā|va|ko sā|dhu ho|ti  prā|na

- - ・ -・  ・ ・ - ・ - ・   - -  ・
yas|sin|dri|yā|ni sa|ma|thaṁ ga|tā|ni  svāk|khā|ta

-・ ・  - ・  - - -  -・ - -  ・   -  ・ -
in|dri|ya|gut|ti san|tuṭ|ṭhī pā|ti|mok|khe ca saṁ|va|ro

--  ・- ・-   - -  -・  - -  ・   - ・ -
e|taṁ vi|se|sa|to ñat|vā ap|pa|mā|dam|hi paṇ|ḍi|tā

・ -・ - - ・ ・  - ・  -  -    -  - ・
ma|rī|ci|dham|maṁ a|bhi|sam|bu|dhā|no  dis|vā|na

- - -  ・ ・  - -  - -  - -  - ・ -・-
tas|mā saṁ|ya|ma|yat|tā|naṁ as|saṁ bhad|raṁ va vā|ṇi|jo

   - - ・    -  ・- -  ・   -  - ・   ・  -   -   -
chet|vā|na  dvā|ra|bā|hā|su  kat|vā|na  sa|mā|gant|vā

- -  ・  - ・・   -   - -・  -  - ・  -  ・・
pā|po pi pas|sa|ti bhad|raṁ yā|va pā|paṁ na pac|ca|ti

  -   -  ・ -  -   -    --・  -  -  -・
dve|dhā|pa|thaṃ  bhad|raṃ  jiv|hā|ya ā|gant|vā|na

・ - ・ -・  - - ・ -・-  -・   -  ・  -    -   -
ya|dā dva|ye|su dham|me|su pā|ra|gū ho|ti brāh|ma|ṇo  tas|mā

 - ・  -  ・・ - - - -- -  - ・   - ・-   ・  -  -
mā|ta|raṁ pi|ta|raṁ hant|vā rā|jā|no dve ca khat|ti|ye  ṭha|pet|vā

--・ -  ・  -  -・   -・  -     -  ・-・・    ・・ -・-
ā|rā|ma|ruk|kha|ce|tyā|ni  e|sa kho vyan|ti|kā|hi|ti  a|na|pā|yi|nī

 -   - ・  -・  ・・  -   -    -  -  ・ ・ ・  - ・  -
pup|phā|ni he|va pa|ci|nan|taṁ byā|sat|ta|ma|na|saṁ na|raṁ

 - -  -  - ・・ -  -   ・  --
san|to dan|to ni|ya|to brah|ma|cā|rī

- - ・ -  - ・ ・ -  ・   -  ・
so brāh|ma|ṇo so sa|ma|ṇo sa bhik|khu

・・-  -  ・-  -    -  -  --・・  - ・ -
a|ti|vā|kyaṁ ti|tik|khis|saṁ, dus|sī|lo hi ba|huj|ja|no

 -  -  ・ -  -  -   -   - -・  -     -  ・  - ・ -
nig|gay|ha|vā|diṁ me|dhā|viṁ tā|di|saṁ paṇ|ḍi|taṁ bha|je

・  ・  - -・ - - ・  -   -  ・  ・  ・  - ・ -
pa|tha|vyā e|ka|raj|je|na sag|gas|sa ga|ma|ne|na vā

  - -  -  -  ・   - - ・  -・- -  ・- ・  ・
dan|to seṭ|ṭho ma|nus|se|su yo|ti|vā|kyaṁ ti|tik|kha|ti

  ・ - ・  - -  - - -   ・ - ・  ・ ・  - ・ -
bha|je|tha mit|te kal|yā|ṇe, bha|je|tha pu|ri|sut|ta|me

-  - -  -   ・・ -  -   -   -  ・-
yo bā|lo mañ|ña|ti bāl|yaṁ san|tind|ri|yo

-- ・  ・ ・ -  - -  -   - ・ ・ ・  - ・ -
ā|ro|gya|pa|ra|mā lā|bhā, san|tuṭ|ṭhi|pa|ra|maṁ dha|naṁ

・・  -   - ・?  ・・・・ -  ・?
u|pa|nay|han|ti   u|pa|na|y|han|ti
(参考文献によって、同じ箇所の韻律と長短の解釈が違う。ダ3(c))

・・-- -   ・   -  -   ・ -   -   -  ・ -    ・   -
a|ca|rit|vā brah|ma|cari|yaṁ a|lad|dhā yob|ba|ne dha|naṁ
(備考:cari|yaṁのiは、不完全部分母音。不完全部分母音は、韻律を調べる(韻律を付けて詠む)際にはふつう無視する。そのため、cariは、2短音節でなく1長音節扱い。他にも、よくある例としては、arahaの2つめのa、ariyaのi、iriyatiの2つめのi、kayiraのi、viriyaの2つめのiなど。)

・・  -  ・  -  -   - -  -
a|su|bhā|nu|pas|siṁ viha|ran|taṁ
(備考:viha|ran|taṃのvihaのaも、不完全部分母音。そのため、vihaも、2短音節でなく1長音節扱い。)

・  - ・ -  - ・  ・ -  ・ - ・ -
ya|da-j|jha|gā sak|ya|mu|nī sa|mā|hi|to
(注:sakyaのところが、参考文献では-・となっていたので、戸惑いました。そこで、強勢位置の影響というものを考え(実際の発音がサ(ッ)キャかなと想像し)、sak|(k)yaと分けるのかなと思いました。ただし、自信はなく、「サキャと読み、sa|kyaと分けて、・・である」という解釈が正しい可能性もあるのかなとも思います。なお、Jagatīの韻律ではここは長短両方可なのですが。)

  -  ・ -  - ・ ・・ ・  -   ・・  - ・  ・ ・ -   ・ -
Sab|ba|pā|pas|sa a|ka|ra|ṇaṃ ku|sa|las|sa u|pa|sam|pa|dā.

- -  - - ・   -  - - - -  -   - ・  -・ -
Jā|tit|thad|dho dha|nat|thad|dho, Got|tat|thad|dho ca yo na|ro;

  - - - ・・ -  -・   - ・-  ・  ・ -  ・   -
Saṃ ñā|tiṃ a|ti|mañ|ñe|ti, Tam pa|rā|bha|va|to mu|khaṃ.

- - ・・-・- ・-  -  -   -  ・  ・- ・ - ・ ・
Ap|paṃ va|ta jī|vi|taṃ i|daṃ, O|raṃ vas|sa|sa|tā pi miy|ya|ti;

-  - ・・-・ -・・・ ・  -   - ・・ -・  -  ・・
Yo ce pi a|tic|ca jī|va|ti, A|tha kho so ja|ra|sā pi miy|ya|ti.

-  - ・・ -  ・- ・ -  -  ・ ・  -   -  ・ ・  -   ・- ・  -  ・
Yo up|pa|ti|taṃ vi|ne|ti ko|dhaṃ, Vi|sa|taṃ sap|pa|vi|saṃ va o|sa|dhe|hi;

- - ・ ・ -・-・ -  -  ・・ - -  ・  ・ ・ ・  -   ・ -  -
So bhik|khu ja|hā|ti o|ra|pā|raṃ, U|ra|go jiṇ|ṇa|m i|va ta|caṃ pu|rā|naṃ.
(備考:語尾mと語頭iが結合しmiという1つの短音節)

・   -   ・  - - ・ ・ -  ・  - -
na taṁ da|ḷhaṁ ban|dha|na|m-ā|hu dhī|rā
(備考:語尾mと語頭āが結合しmāという1つの長音節)

 -  -   -  - ・   -   -  ・ ・ -  ・  ・  ・  -  ・ -
sak|kā|raṁ nā|bhi|nan|dey|ya, vi|ve|ka|m-a|nu|brū|ha|ye
(備考:語尾mと語頭aで1短音節)

・  ・ -   -・  - -  ・  -  -  - - ・・- ・-
ta|m-a|haṁ sā|ra|thiṁ brū|mi ras|mig|gā|ho i|ta|ro ja|no
(備考:語尾mと語頭aで1短音節)

-・  - -   ・ -   -  - ・  ・   -  - ・    -   ・  -
ut|ta|mat|thaṁ a|nup|pat|taṁ, ta|m-a|haṁ brū|mi brāh|ma|ṇaṁ
(備考:語尾mと語頭aで1短音節)

 - - ・   - -・  ・   -   ・ - -
kum|bhū|pa|maṁ kā|ya|m-i|maṁ vi|dit|vā
(備考:語尾mと語頭iで1短音節)

・  ・ - ・  - -・  ・   -   ・ -  -
na|ga|rū|pa|maṁ cit|ta|m-i|daṁ ṭha|pet|vā
(備考:語尾mと語頭iで1短音節)

  -  -  ・ - ・  -  - - -・  - - ・  - ・ -
haṁ|sā va pal|la|laṁ hit|vā o|ka|m-o|kaṁ ja|han|ti te
(備考:語尾mと語頭oで1長音節)

・ -  ・  - -  ・ -  - ・  - ・-
ta|d-aj|ja|haṁ nig|ga|hes|sā|mi yo|ni|so
(備考:語尾dと語頭ajで1長音節)

・- - -  ・ - - ・ -  -   ・ ・  ・ - ・  -
ta|to naṁ duk|kha|m-an|ve|ti cak|kaṁ va va|ha|to pa|daṁ
(備考:語尾mと語頭anで1長音節)

・ ・   -   ・ ・ -  -  - ---- ・ -  ・  -
va|ra|m-as|sa|ta|rā dan|tā ā|jā|nī|yā ca sin|dha|vā
(備考:語尾mと語頭asで1長音節)

 きりがないかもしれませんので、この辺で抜き出しを終了します。なお、もっと具体例が見たい場合は、先ほどもあげたĀnandajoti Bhikkhu という方が各経典の韻律分析をされた文書(URL:https://www.ancient-buddhist-texts.net/Buddhist-Texts/BT-index.htmに掲載)が大変勉強になると思います。


■ 5.長音節と短音節の実例パターン

 上記4などで検討し、区切った各音節(もしかすると間違った区切り方のものが含まれているかもしれませんが)を、参考文献(主に、阪本(1978)p.62、南(1997)pp.172-3)に書かれていた分類(と、それをもとに独自に細分化・追加した分類)にあてはめてみました。順序に意味はありませんし、網羅的なわけでもありません。

 この実例パターンは、音節を見分けるうえでヒントになるだろうと思っていますが、ただし、本来、音節や韻律は発音上の話であるにもかかわらず、この方法は、ローマ字(=ラテン文字、ラテン・アルファベット)表記を分解した、いわば「死んだ」標本であり、その綴りの字面に依存してしまいかねず、パターンの当てはめに失敗してしまう恐れが十分にありうることに注意しておかなければならないと思います。


● 長音節(正式には重音節,パーリ語でgaru) 次の4通り

① 長母音をもつ音節(v,cv)
 (例) e o go lī no tā ro pā dā jā jī kā ko yo ñā ñe rā rī to lā sā se lo ṇo me mo te ye so vā gā hā ve cā mā re ko kā dhā dhī dho dhe bhū bhī thā ṭhā ṭhe ṭho chā m-e

② 結合子音に後続される母音をもつ音節(cvcc)(まれ)
 (例) hant gant tind

②’ 結合子音に後続する母音/長母音をもつ音節?(ccv,ccvc)(注:仲間はずれ等のため、筆者が独自に追加した分類です。音節の分け方からして間違っている恐れもありえます。まれだと思います)
 (例) dri brū brāh brah trā tre prā dva dvā dve byā vyā tyā svāk vyan kyaṃ

③ niggahīta(ṁ/ṃ)を伴う母音をもつ音節(cvc)
 (例) caṃ ṇaṃ saṃ tiṃ maṃ ñaṃ viṃ daṃ ḍaṃ naṃ taṃ kaṃ paṃ laṃ raṃ haṃ khaṃ thaṃ dhaṃ ḷhaṃ

④ 子音を伴って終わる母音をもつ音節(vc,cvc)
 (例) ak uk an añ ap up puc gac nig tit tin nat ñat kat got tat cit yat met mok tad bud kap tas san sap sab sas ṇas mas pas dis tas las ras has hit hes vas ves vud yas ñas nay jal jas jiv miy hon mañ pañ tam gam pañ daṇ san sam van han jiṇ sīl chet thad this ṭhat khoc dham dhey chey bhik bhin bhit bhad ghas n'ic d-aj m-as m-an bāl kal gay cari* viha* (*不完全部分母音は無視される)

※一部前述しましたが、行末の音節はほぼいつも(若干例外あり)、行頭の音節も時々、実際の音価に関わらず、韻律上、長音節として扱われることがあります。


● 短音節(正式には軽音節,パーリ語でlahu) 次の2通り
(備考:参考文献では「それ以外の音節…」などの表現で、分けずにまとめられていましたが、あえて細分化してみました)

⑤ 1つの短母音をもつ音節(v)
(例) a i u y(このyは(iと解す)例外的なケースだと思います。ただし、他の参考文献では同じ所がnayという音節で長音節の解釈になっていました。両論併記とさせてください)

⑥ 1つの子音+1つの短母音をもつ音節(cv)
(例) ka ti ta ṭi ma ba sa ka ra ri ku pa pu ca na ni ña va vi mu hi ni ya yi su ha ṇa dha cha kha khi khu bha gha tha chi dha dhi dhu m-i n'u j'a (例外的に gya ?)


■ 6.長音節と短音節の自己流判別法~カナ発音にもとづいて~(参考程度)

 前述のとおり、音韻論の文献によると、ローマ字が音素単位であるのに対し、カナは音価単位の字で、音節により近い単位です。なお、言語学一般の書籍や国語辞典によると、カナは日本語1音節を1字で表す音節文字だそうです。そこで、素人考えから、パーリ語でも、音節は、ローマ字よりカナで捉えたほうがまだよいのではないかと考え、パーリ語をカナ発音できれば概ね楽に判別できる自己流の判別法を編み出しました。

 ★「〇ー」、「〇ン」、「〇ッ」(「〇○ー」「〇○ン」「〇○ッ」も含む)
    ⇒ 1つの長音節

 ★ それ以外(カナ一字、「〇ァ」、「〇ャ」、「〇ィ」、「〇ゥ」)
    ⇒ 1つの短音節

 (注) 前述の分類②や、②’のうち dri dva dve brū brāh brahなどや、分類④のうちtad kal gayなどの場合、カナ発音の表記に頼ると、これらを2つの音節に分割してしまう間違いを犯す恐れがあります。この場合は、ローマ字表記から判定したほうがよいと思います。

 上記の注意書きのとおり、カナ発音に基づくこの判別法には弱点があります。また、韻律の種類との照合、文法解析のためには、やはりローマ字表記に戻って検討する必要があり、二度手間という欠点もあります。


■ 7.音価や音節の自己流数え方・判別法~カナ発音にもとづいて~(参考程度)

 また、前述のとおり、音価(パーリ語でmattā。モーラ、音長、音量ともいう。音節が有する音の長さ)という単位で表現されている文字がカナであること、パーリ語には2音価の法則(原則的に3音価以上は認められないという法則)があることから、カナ発音にもとづいて、下記のような法則で、音価を数え、短音節と長音節を判別することができます。

 なお、上記見出し6と同様、素人感覚の経験的法則にすぎません。しかし、上記6に比べて少し手間がかかる一方で、音価とカナの相性の良さにより、法則としての精度がより高い(または、適用範囲がより広い)のではないかとも思っております。改良版のような位置づけです。そういった意味で、ここまで(特に3から)パーリ語の音節についていろいろと説明してきましたが、韻律の話に入る上での最小限の説明としてはこの7だけで十分かもしれません。

◆ カナ表記にもとづく音価の数え方と長音節・短音節判別の原則

【基本】

  • カナ1字で、1音価と数える。そして、これ単独で1音節(短音節)を作る。

【特殊】

  • 小さい「ァ,ィ,ゥ,ェ,ォ,ャ,ュ,ョ」(拗音やそれに似た音)は、1音価と数えない。それゆえ、これ単独では音節を作らず、前方のカナ1字と一体となって1音価の1音節(短音節)を作る。
  • 小さい「ッ」(促音)は、1音価と数える。しかし、これ単独では1つの音節を作らず、前方のカナ1字とともに2音価の1音節(長音節)を作る。
  • 「ン」(撥音)も、同上。すなわち、1音価と数えるが、これ単独では1つの音節を作らず、前方のカナ1字とともに2音価の1音節(長音節)を作る。
  • 「ー」(長音符号)も、同上。すなわち、これ自体を1音価と数えるが、これ単独で1つの音節を作らず、前方のカナ1字とともに2音価の1音節(長音節)を作る。


◆ 音価数と長音節・短音節の関係

 上記やそれ以前の内容と重複するところもありますが、2音価の法則の例外の説明も含めて、別角度から見ますと、次のようにまとめられます。

  • 原則として、1音価で1つの短音節2音価で1つの長音節、となります。
  • 例外として、3音価や4音価で1つの長音節の扱いとなる場合があります。

この例外ケースを詳しく言いますと、子音結合(異なる子音の連続)があるとき、上記法則も踏まえると、子音1つ残して孤立させてしまうような分け方を避けるために(子音1つだけでは音節を作れないので)、その付近の3音価や4音価の部分を分割することができない場合には、その3音価や4音価で1つの長音節となります。

 (注) 前述の6での注記と同様、カナ表記に頼ると3音価や4音価を複数に分けてしまう間違いを犯す恐れがありますので、ローマ字表記も同時に見て、子音結合(特に*r,*v,*dなどという綴り)に注意しておいたほうがよいと思います。

● 具体例で説明

 上記の内容全体を、具体的な単語を例にして説明します。単語とそのカナ発音、それにもとづく音価の区切り方や数え方、長音節か短音節かの判別を書いています。

 (記号:/ 音価の区切り | 音節の区切り - 長音節 ・ 短音節)

 buddha(ブッダ)の場合、ブ/ッ⇒(小さいッは1音価だが前方のブとともにブッで)2音価なので長音節、ダ⇒1音価なので短音節。よって、bud|dhaと分けられ、-・と判別できる。

 santi(サンティ)の場合、サ/ン⇒(ンは1音価だが前方のサとともにサンで)2音価なので長音節、ティ⇒(小さいィは1音価と数えずに前方のテと一体なのでティで)1音価で短音節。よって、san|ti、-・。

 purāṇa(プラーナ)の場合、プ⇒1音価なので短音節、ラ/ー⇒(長音符号は1音価だが前方のラとともにラーで)2音価なので長音節、ナ⇒1音価なので短音節。よって、pu|rā|ṇa、・-・。

 ここまでは、原則だけで説明可能な例でしたが、次からは、例外的ルール(すなわち、3音価や4音価で1長音節扱いのケース)も含めて説明する必要があるものです。

 prāna(プラーナ)の場合(備考:カナ発音レベルだと上記と同じに見えてしまうが…)、プ/ラ/ー(prā)⇒(プで1音価、ラーで2音価、足して)3音価だがpを孤立させないために分けず(pだけで音節は作れないので。pとrāには分けられず)一括で1つの長音節、ナ⇒1音価なので短音節。よって、prā|na、-・です。

 dussīlya(ドゥッシールヤ)の場合、ドゥ/ッ(dus)⇒(小さいゥは1音価と数えずに前のドと一体、そして、小さいッは1音価だが前方のドゥとともに、ということでドゥッで)2音価なので長音節、シ/ー/ル(sīl)⇒(長音符号は1音価だが前方のシとともにシーで2音価、それとルの1音価、足して)3音価だが l(←エルです)を孤立させないために分けずに一括で1つの長音節、ヤ⇒1音価なので短音節。よって、dus|sīl|ya、--・。

 dvādasa(ドゥヴァーダサ)の場合、ドゥ/ヴァ/ー(dvā)⇒3音価だがdを孤立させないために分けずに一括で1つの長音節、ダ⇒1音価なので短音節、サ⇒1音価なので短音節。よって、dvā|da|sa、-・・。

 kulesvananugiddho(クレースワナヌギッドー)(VRI版の慈経第2偈)の場合、ク⇒1音価なので短音節、レ/ー/ス(les)⇒3音価だがsを孤立させないために分けずに一括で1つの長音節、ワ⇒1音価なので短音節、ナ⇒1音価なので短音節、ヌ⇒1音価なので短音節、ギ/ッ⇒2音価なので長音節、ド/ー⇒2音価なので長音節。よって、ku|les|va|na|nu|gid|dho、・-・・・--。

 svākkhāta(スワーッカータ)の場合、ス/ワ/ー/ッ(svāk)⇒4音価だがsとkそれぞれを孤立させないために分けずに一括で1つの長音節、カ/ー⇒2音価なので長音節、タ⇒1音価なので短音節。よって、svāk|khā|ta、--・。

 brāhmaṇa(ブラーフマナ)の場合、ブラーフ(brāh)⇒4音価だがbとhそれぞれを孤立させないために分けずに一括で1つの長音節、マ⇒1音価なので短音節、ナ⇒1音価なので短音節。よって、brāh|ma|ṇa、-・・。

 このように、カナ発音ができれば、この経験的法則にしたがって、ほとんどの場合的確に、音価を数え、音節を判別することができると思います。


 以上、筆者が試行錯誤した、韻律の話に入る前提としての、音節の区分と長音節か短音節かの判別のための、いろいろな素人的方法や法則を紹介しました。


* 余談(カナを用いる意義について後押ししてくれる話かもと思った余談を最後に)

 平安時代に、日本語による仏教の理解を目指して、悉曇学(仏教経典読解のためにサンスクリットの文字や音声を研究する、中国発祥の学問)と国語音韻の研究に没頭し、優れた業績を残した僧侶がいます。加賀の薬王院温泉寺にいた、天台宗の僧、明覚上人です。
 いきなり専門的な言葉が並びましたが、なじみ深い点は、この方が「アイウエオ」で始まる五十音の配列図の原形を作った方だということです。『反音作法』という書物で、「子音と母音の組み合わせによって日本語の音韻体系が成り立っているということを『五十音の図』として説明し、今日の五十音図につながる基礎を築いた」(山口(2007)p.118)とされます。
 そして、この方は、『梵字形音義』という書物で、「梵字を知らなくては仏説を本当には理解することができないと述べ、また梵字や漢語の音を知る上においても日本の〈かな〉の優位性を説」いたそうです(前掲書,p.124)。
 当然ちがう言語の話なので、我田引水的になると思いますが、この話(特に最後の、〈かな〉の優位性)を最近になって(上記6や7を書いた後に)知ったとき、パーリ語の音を日本語のカナでどうにか説明しようという試みもあながち的外れではないのかなと手前勝手に思った次第です。失礼しました。

 


■ 8.パーリ語の韻律の種類

 ここから、ようやく本題の韻律の話に入ります。

 まず一般的に、韻律(metre,meter)とは、国語辞典によると「音声の長短・強弱・高低の組合せや、母音・子音の配列、音節数の形式などによる、韻文の音楽的な調子」(新明解国語辞典)、「韻文で、音の強弱・長短・高低、または同音や類音の反復などによって作り出される言葉のリズム」(スーパー大辞林)です。

 そして、パーリ語の韻律(パーリ語ではchando)は、専門的な論文によると

Prākrit*1の韻律にではなく、本質的にSanskritの韻律に属し、Veda*2の韻律から古典Skt.の韻律へと移行してゆく過渡期に位置づけられる(出典:阪本(1978)p.61)

 とされています(注番号と下の注記は引用者(つまりこのブログ記事筆者)によるもの)

*1 プラークリットとは、「中期インド=アーリア語ともいうべき言語で、文章語としてのサンスクリット語に対して、文献上に残された口語方言の総称」(ブリタニカ国際大百科事典)。
*2 ヴェーダとは、「古代インドのバラモン教の根本聖典。インド最古の文献」であるヴェーダを記している言語であり、「古典サンスクリットより古い」。(スーパー大辞林)

 そこで、サンスクリット語の文法書にも挑戦してみたのですが、韻律の分類や名称が文献ごとにいろいろ異なっていたり、サンスクリットでの説明をそのままパーリ語に当てはめてよいのかなどと悩んだりして、あまり理解できませんでした。(おそらく大学などで仏教を専攻する人はサンスクリットも学ばなくてはいけないんだろうと思いますが、市井のアマチュアとしてはあきらめました。図書館で読んだ4冊のサンスクリット文法書からは、韻律関連の部分のメモをとったりしたのですが、理解不足から恐らくほとんどこのノートに活かせていませんので、参考文献リストには載せませんでした。)

 ということで、結局、あまり分かっていないのですが、学問としてやっているわけではありませんので、とりあえずいったん立ち止まり、本来の実用上の学習目的を思い返し、パーリ経典の学習・翻訳に役立ちそうな、使用頻度の高い韻律に絞ってメモを整理してみました。

 使用頻度は、古来からある形のSiloka(= vatta)、Tuṭṭhubha・Jagatī、新しい形のGaṇacchando、Mattāchandoの順だそうです。参考文献を見比べたうえで、無難で分かりやすそうな体系に基づいて分類し、詳細な例外や稀な韻律の説明はある程度省略しました。なお、分類や韻律の名称はできる限りパーリ語表記を採用したつもりです。


※〈記号説明〉
(備考:正式な記号はおそらく、− 長音節のみ可、 ⏑や◡や◡ 短音節のみ可、⏓ どちらも可、などですが、これらの記号や音節分解の現象を表す記号(◡◡)を組み合わせた記号を、通常の文字サイズやフォントで出すのは難しいかもしれないため、パソコン入力・ブログ表示上の簡便さや汎用性の点から、下記の、やや簡易的な独自の記号を用いたいと思います。それらの記号の本来の意味と関係なく用いていることにご留意ください。また、ブログに試しに掲載し、何となくの見た目だけで、記号を選びましたので、この記事をどこかに貼り付け保存した際には不自然に見えると思われます(サンセリフ=ゴシック体のフォントにすれば少しましになるかもしれませんが)。ご寛容のほどよろしくお願いします。)

 ー  1長音節のみ可
   ・   1短音節のみ可
 ∸   どちらでも可(1短音節か,1長音節か)
 ー'   1長音節か,音節分解で2短音節か
 ∸'  1短音節か,1長音節か,音節分解で2短音節か
  /  前半・(中間)・後半の区切り
  ,  行内中間休止
 ダ  ダンマパダ

(音節分解(resolution)とは、1つの長音節の箇所に代わりに2つの短音節を用いる現象( ー ⇒・・)。逆に、2短音節の箇所に代わりに1長音節を用いる代替(replacement)という現象(・・⇒ ー )もあり。)
(文献によって微妙に説明が違う所は、なるべく多様な可能性を示す記号を優先記載かつ下に注記。)



● 古来からの韻律 ●
(ヴェーダ以来用いられている韻律形式。パーリ三蔵ではこちらが多い。)
 ・音節の数のみで規定される。
 ・4つか6つの行(pāda)(すなわち(a)(b)(c)(d)か(a)(b)(c)(d)(e)(f))で構成される。
 ・通常、単語が次の行にまたがることはない。
 ・行の最初と最後の音節の音価は、他の位置と比べてかなり自由が許される。
 ・行の偶数音節(第2・4音節)には長音節が好まれ、一般的に・ーで構成される。
 ・行の前半より後半(通常3~5音節分)のほうが固定的で、破格はできるだけ避けられる。

【Siloka(= Vatta)】
 :1行あたりの音節数が8音節(前半(opening)4音節 / 後半(cadence)4音節という構成)。
 :奇数行の(a)と(c)が同じ形、偶数行の(b)と(d)が同じ形。

 ▪ 標準形(pathyā vatta)

  (a)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ー' ー ∸  (b)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ー ・ ∸
  (c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ー' ー ∸  (d)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ー ・ ∸

 (この標準形は、(a)(c)の第5音節と(b)(d)の第5,7音節が ・ であるのが特徴と言える。)
 (全行とも第2,3音節が ・ ・ となるのは普通NG。(b)(d)の第3,4音節が ・ ー となるのもNG。)
 (奇数行(a)(c)の第1音節は、∸'(長音節1つか、短音節1つか、音節分解で短音節2つか)。
  また、(a)(c)の第6音節は、文献によって異なり、 ー'(長音節1つか、音節分解で短音節2つか)としているものと、 ー としているものとあり。また、偶数行(b)(d)の第1音節も、文献によって異なり、 ∸ としているものと、 ∸'としているものとあり。)
 (例:ダ2(a)-(f),6(a)-(d)等)

 ▪ 古形(anuṭṭhubha= ja-vipulā, setava-vipulā)

  (a)(b)(c)(d)とも  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ー ・ ∸

 (例:ダ85(c)(d),135(c)(d)等)

 ▪ 変化形(vipulā)(奇数行の(a)(c)(特に後半)に上記pathyāとは異なる構成をもつもの)

 *第一(first vipulā= na-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ・ ・ ∸
  多いのは  ∸' ー ∸ ー / ・ ・ ・ ∸  や  ∸' ー ・ ー / ・ ・ ・ ∸  や  ∸' ・ ー ー / ・ ・ ・ ∸  や  ー ー ー ー / ・ ・ ・ ∸  など
  (例:ダ3(a)(b),4(a)(b)等)

 *第二(second vipulā= bha-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ー ・ ・ ∸
  多いのは ∸' ー ∸ ー / ー ・ ・ ∸ や ∸' ー ・ ー / ー ・ ・ ∸ など
  (例:ダ21(a)(b),23(a)(b)等)

 *第三(third vipulā= ma-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ー , ー ー ∸
  多いのは  ∸' ー ・ ー / ー , ー ー ∸
  (例:ダ7(a)(b),8(a)(b)等)

 *第四(forth vipulā= ra-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ ,/ ー ・ ー ∸
  多いのは  ∸' ∸ ∸ ー ,/ ー ・ ー ∸
  (例:ダ87(a)(b),155(a)(b)等)

 *第五(fifth vipulā= sa-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ・ ・ ー ∸
  (例:ダ7(e)(f),8(e)(f)等)

 *第六(sixth non-pathyā= ta-vipulā)
  (a)(c)  ∸' ∸ ∸ ∸ / ー ー ・ ∸
  多いのは ∸' ー ・ ー / ー ー ・ ∸
  (例:未見。極めてまれ)

 (古形と変化形すべての第1音節について、 ∸'でなく、 ∸ としている文献もあり。)


【Tuṭṭhubha】 ・ 【Jagatī】
 :1行(pd)あたりの音節数が11~13音節(これ以上の場合もあり。非常に多数の種類がある)。
 :(a)(b)(c)(d)すべての行が同じ形。
 :Jagatīは、Tuṭṭhubhaと違って、最後から2番目の音節に短音節が入る形。
 :前半は比較的自由だが、後半は厳格に守られる。
 :中間休止(,)は概ね単語の切れ目と一致する。
 :各第3音節を ∸ とする文献もあるが、多いのは、前半部分が ∸' ー ・ ー である形。

 ▪ 標準形
 (前半(opening)4音節 / 中間(break)3音節 / 後半(cadence)4または5音節という構成)

 *11音節Tuṭṭhubha
  (a)(b)(c)(d)とも  ∸' ー ∸ ー ,/ ∸ , ・ ∸ / ー ・ ー ∸
  (例:ダ19(a)-(d),20(a)-(d)等)

 *12音節Jagatī
  (a)(b)(c)(d)とも  ∸' ー ∸ ー ,/ ∸ , ・ ∸ / ー ・ ー ・ ∸
  (例:ダ40(d),84(d)等)

 (前半で多い形は ∸ ー ・ ー だが ∸ ー ー ー も見る。
  中間で多い形は ー ・ ・ 。 ・ ー ・ や ・ ・ ・ もあり。)

 ▪ 変化形
 (前半(opening)5音節 / 中間(break)3音節 / 後半(cadence)4または5音節という構成)

 *12音節Tuṭṭhubha
  (a)(b)(c)(d)とも  ∸ ー ∸ ー ー ,/ ∸ ・ ∸ / ー ・ ー ∸
  (例:ダ20(e),40(b)等)

 *13音節Jagatī
  (a)(b)(c)(d)とも  ∸ ー ∸ ー ー ,/ ∸ ・ ∸ / ー ・ ー ・ ∸
  (例:未見)

 (他に、音節数によって規定される韻律は、6音節×4行のgāyattīから22音節×4行のākatiまであるらしいが、頻度は極めて低いそうです。)


● 新しい韻律 ●
(古典サンスクリット期以降に、古来からの韻律を基礎に発展 ・ 出現した韻律形式。)
 ・音価mattāの数や音節群gaṇaの組み合わせなどで規定される。
 ・音価は原則、短音節なら1mattā、長音節なら2mattāである。
 ・例外的に3mattā以上の音節もある(例えば、brāhmaṇaのbrāh)が、韻律上は2mattāと解する。
 ・音節群は、4mattāで1gaṇa とする。
 ・大別するとGaṇacchando、Mattāchando、Akkharacchandoの3つだが、前二者のパーリ経典での使用例は少なく、Akkharacchandoの使用例は厳密にはない(それゆえ省略)。

【Gaṇacchando】
 :各行の構成を音節群gaṇaの組み合わせによって規定するもの。
 :行単位では数えず、2対または3対の聯(padayuga)単位で構成される。

 ▪ Gīti
  全体で30m(4m×7gaṇa=28m + ∸ )を有する偶句(聯)を、2聯(つまり60m),3聯(つまり90m)で構成。
  4m/4m/4m/4m/4m/4m*/4m/ ∸  × 2聯,3聯
  * 第6gaṇaは、 ー' ー または ・ ー ・ 。
  (一般に奇数gaṇaでの ・ ー ・ は避けられ、gaṇa中の後ろ2mを ー とする。)
  (例:慈経1-10?)

 ▪ Ariyā
  2聯一対で、前聯はgītiと同形式の30mで、後聯は27m。
  4m/4m/4m/4m/4m/4m*/4m/ ∸ /4m/4m/4m/4m/4m/ ・ /4m/ ∸
  * 第6gaṇaは、 ー' ー または ・ ー ・ 。
  (なお、後聯の第6節目に ・ がくることによって後聯は27mとなっている。)
  (例:未見)

 ▪ Uggīti
  2聯一対で、Ariyāと逆で、前聯は27mで、後聯は30m。以下略

 ▪ Upagīti
  2聯一対で、前聯は27mで、後聯も27m。以下略

 ▪ Ariyāgīti
  2聯一対で、前聯は32m(4m×8gaṇa=32m)で、後聯も32m。以下略

【Mattāchando】
 :各行を一定の音価mattāによって規定するもの。
 :後半は厳密に固定されている。ただ前半においても下記のような規定がある。
 :前半において、偶数番目の音価と次の音価の結合による長音節は形成できない。
  (これは、特定の位置での音節分解(resolution)を禁止している規定であるが、例外的に、(a)(c)(Mattāsamakaでは(a)(b)(c)(d))の第2,3音節の ー ー が ・ ー ・ に代用される現象(=syncopation:一定の韻律強勢と異なる修辞的強勢を用いること)が見られる。)
 :また、(b)(d)の前半では、6つの短音節が連続してはならない。

 ▪ Vetālīya
  (a)と(c)が14mで同じ形、(b)と(d)が16mで同じ形。
  (a)  ー' ー' ー' ー / ・ ー ・ ∸  (b)  ー' ー' ー' ー' / ー ・ ー ・ ∸
  (c)  ー' ー' ー' ー / ・ ー ・ ∸  (d)  ー' ー' ー' ー' / ー ・ ー ・ ∸
  (例:ダ15等)

 ▪ Opachandasaka
  (a)と(c)が16mで同じ形、(b)と(d)が18mで同じ形。
  (a)  ー' ー' ー' ー / ・ ー ・ ー ∸  (b)  ー' ー' ー' ー' / ー ・ ー ・ ー ∸
  (c)  ー' ー' ー' ー / ・ ー ・ ー ∸  (d)  ー' ー' ー' ー' / ー ・ ー ・ ー ∸
  (例:ダ184等)

 ▪ Mattāsamaka
  (a)(b)(c)(d)とも16mで同じ形。
   ー' ー' ー' ー' / ・ ・ ー' ー' ー
  (例:未見。ほぼなし)


■ 9.韻律の混用

 Ānandajoti Bhikkhu(2016)のダンマパダ韻律分析を見ていますと、1つの偈文の中で行ごとに違う種類の韻律が混用されているケースを多く見つけます。

 ただし、同じグループ内での混用です。すなわち、Silokaの中、Tuṭṭhubha / Jagatīの中、Mattāchandoの中で、それぞれ別種類が混用されているということです。

 例えば、ダンマパダ8偈は(a)(b)がma-vipulā、(c)(d)がpathyā vatta、(e)(f)がsa-vipulā、40偈は(a)(b)(c)がTuṭṭhubha、(d)がJagatīなどといった感じです。

 VetālīyaとOpachandasakaも、まれに同じ偈の中で混用され、その例として、ダンマパダ344偈は(a)がOpachandasaka、(b)(c)(d)がVetālīyaです。

 しかし一方で、全行ともpathyā vatta、全行ともVetālīya、全行ともTuṭṭhubhaというケースもそれぞれ数多く見ました。(どちらもダンマパダに限った話かもしれませんが。)


■ 10.韻律に合わせるための発音(綴り)変化

 韻律に合わせるために発音(綴り)が変化する現象は、大別すると、①母音の長音化または短音化、②子音の重複化または単一化、③抑制音ṃの採用または脱落の3種類です。

 そして、この現象は手当たり次第に起こるわけではなく、1.最後の音節で最も起こりやすい、2.中間の音節では、連結部分(コンパウンド内の単語と単語の間、語根や語基と接頭辞や接尾辞の間)でのみ起こる、3.最初の音節でもまれに起こる、ということが指摘されています。


①母音の長音化または短音化の例

 ● スッタニパータ787(d)(タイ版) Tasmā munī natthi khilo kuhiñci

 この行では、muni(牟尼)という男性名詞は、文脈上、単数・主格の形が適すると考えられます。和訳としては、「それゆえに、牟尼には、鬱積〔の思い〕が、どこにも存在しない」となると思います。

 となると、本来の文法上の発音(綴り)は、男性名詞i語基の曲用表によれば、単数・主格では、muniのはずですが、実際は、munīとなっています。そこで、その理由として、韻律に合わせるための変化の可能性が浮かびます。

 この行は、Tas|mā mu|nī nat|thi khi|lo ku|hiñ|ciと、11音節に分けられますので、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に従っていると仮定できます。同韻律の第4音節は長音節でなければならないことになっています。

 ということで、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に合わせるため、mu|niがmu|nīになった(母音が長音化した)、と説明することができると思います。

 ● スッタニパータ792(d)(タイ版) Nirassatī ādiyatī ca dhammaṃ

 この行では、nirassatiとādiyatiという2つの動詞はどちらも、文脈上、3人称・単数・現在の形が適すると考えられます。和訳としては、「法(見解)を放棄し、かつまた、執取する」となると思います。

 となると、本来の文法上の発音(綴り)は、活用表によれば、3・単・現の形では、~tiのはずですが、実際はどちらも、~tīとなっています。そこで、その理由として、韻律に合わせるための変化の可能性が浮かびます。

 この行は、Ni|ras|sa|tī ā|di|ya|tī ca dham|maṃと、11音節に分けられますので、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に従っていると仮定できます。同韻律の第4音節と第8音節はともに長音節でなければならないことになっています。

 ということで、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に合わせるため、どちらも~tiが~tīになった(母音が長音化した)、と説明することができると思います。

 ● スッタニパータ848(d)(タイ版) Tasmā tuvaṃ momuhato dahāsi

 この行では、momūha(愚かな、迷愚である)という形容詞は、文脈上、男性・単数・奪格の形が適すると考えられます。和訳としては、「それゆえに、あなたは、〔わたしの法を〕『迷愚である』と決め付けるのです」となると思います。

 となると、本来の文法上の発音(綴り)は、男性a語基の曲用表によれば、単数・奪格では、momūhatoのはずですが、実際は、momuhatoとなっています。そこで、その理由として、韻律に合わせるための変化の可能性が浮かびます。

 この行は、Tas|mā tu|vaṃ mo|mu|ha|to da|hā|siと、11音節に分けられますので、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に従っていると仮定できます。同韻律の第6音節は短音節でなければならないことになっています。

 ということで、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に合わせるため、momūhatoが、momuhatoになった(母音が短音化した)、と説明することができると思います。


②子音の重複化または単一化の例

 ● スッタニパータ880(b)(タイ版) Sukhaṃ dukhañcāpi kathaṃ vibhoti

 この行では、dukkha(苦)という中性名詞は、文脈上、単数・主格の形が適すると考えられます。和訳としては、「楽は、さらには、また、苦は、どのようにして、実体を離れるのですか」となると思います。

 となると、本来の文法上の発音(綴り)は、中性a語基の曲用表によれば、単数・主格では、dukkhaṃ(dukkhaṃ + ca + api > dukhañcāpi)のはずですが、実際は、kが一つになっています。そこで、その理由として、韻律に合わせるための変化の可能性が浮かびます。

 この行は、Su|khaṃ du|khañ|cā|pi ka|thaṃ vi|bho|tiと、11音節に分けられますので、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に従っていると仮定できます。同韻律の第3音節については、文献によって説明が異なっていて、長音節と短音節両方可とする文献もありますが、短音節のみとする文献もありました。多いのは短音節である形のようです。

 ということで、他の可能性もありえますが、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に合わせるため、dukkha~が、dukha~になった(重複子音が単一化した)、と説明することができると思います。


③抑制音ṃの採用または脱落の例

 ● スッタニパータ789(b)(タイ版) Anānupuṭṭhova paresa pāva

 この行では、para(他の)という代名詞的形容詞は、文脈上、男性・複数・与格の形が適すると考えられます。和訳としては、「まさしく、〔他者から〕尋ねられていないのに、他者たちに説くなら」となると思います。

 となると、本来の文法上の発音(綴り)は、代名詞的形容詞の曲用表によれば、男性・複数・与格では、paresaṁのはずですが、実際は、paresaになっています。そこで、その理由として、韻律に合わせるための変化の可能性が浮かびます。

 この行は、A|nā|nu|puṭ|ṭho|va pa|re|sa pā|vaと、11音節に分けられますので、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に従っていると仮定できます。同韻律の第9音節は短音節でなければならないことになっています。

 ということで、11音節Tuṭṭhubhaの韻律に合わせるため、paresaṁが、paresaになった(抑制音ṁが脱落した)、と説明することができると思います。


※ 参考文献

  窪薗晴夫『音声学 ・ 音韻論』くろしお出版、1998年
  窪薗晴夫 ・ 本間猛『音節とモーラ』研究社、2002年
  阪本純子「Pāli Jātakaに於けるmātrāchandasの性格」『佛教研究』第7号、1978年2月、pp.64-43(「阪本(後藤)純子の書斎」(URL:https://sakamotogotojunko.jimdo.com/)にて閲覧可)
  水野弘元『パーリ語文法』山喜房佛書林、1955年
  南清隆「パーリ語韻律論の基礎」『華頂短期大学研究紀要』42巻、1997年12月、pp.172-187
  村上真完 ・ 及川真介「パーリ語文法要覧」『パーリ仏教辞典』春秋社、2009年
  山口謠司『日本語の奇跡 〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明』新潮新書、2007年
  Ānandajoti Bhikkhu, "An Outline of the Metres in the Pāḷi Canon", September 2013(URL:https://www.ancient-buddhist-texts.net/Textual-Studies/Outline/にて閲覧可)
  Ānandajoti Bhikkhu ed., "Dhammapada (KN 2)", June 2016、"Khuddakapāṭha (KN 1)", July 2015(URL:https://www.ancient-buddhist-texts.net/Buddhist-Texts/BT-index.htmにてどちらも閲覧可)
  Wilhelm Geiger(伴戸昇空訳)『PĀLI 文献と言語』Abhidharma Research Institute、1987年

ご覧くださり、ありがとうございました。ご参考になれば幸いに存じます。
お幸せでありますように。生きとし生けるものが幸せでありますように。

(文責:脇坂)

パソコン・タブレット・スマホでのパーリ語ローマ字表記入力方法


■ はじめに

 パーリ語に興味のある皆様のご参考までに、通常のパソコンやタブレット・スマホに入っているフォントを使って、ローマ字表記*のパーリ語を入力する方法をご紹介します。

 今回紹介する方法では、しくみとしてUnicodeという文字コードを用いていますので、特殊なフォントのダウンロードやインストールは必要なく、キーボードのキー配列もそのままの状態で普通に文字入力できます。そして、英語には用いられていない(キーボードにない)アルファベット、すなわち、ā などの符号つき特殊アルファベットについては、一字ずつ便宜的な読みを付けて単語登録しておく方法をお勧めしています。こうしておけば、以後は、普通の漢字変換などと同様に簡単に入力でき、たいていのソフト(ブラウザ、メール、テキストエディタ、ワープロ、表計算など)でローマ字表記のパーリ語を扱うことができるようになります。

*「ローマ字表記」についての参考情報
 世界の言語の種類は数千あると言われますが、文字の種類は数百しかありません。もともと文字をもたない言語は他から文字を借りてきて使います(ちなみに、日本語は、漢字を借用しつつ、独自に仮名文字を生み出して用いており、これほど融合された混用は唯一だそうです)。
 その中で、ローマ字(ラテン・アルファベット、ラテン文字とも言う。古代イタリアでラテン語の表記のためにギリシア文字から作られたもの)は、おそらく最も多くの言語(イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、英語、ドイツ語、チェコ語、ポーランド語、ハンガリー語、フィンランド語、インドネシア語、ベトナム語、フィリピノ語、ポリネシア諸語、スワヒリ語、ヨルバ語、トルコ語など)に使用されている文字だと言えると思います。
 そして、ご存じの通り、パーリ語の経典は、セイロン文字、ビルマ文字、タイ文字、カンボジア文字、デーヴァナーガリー、ローマ字など、国それぞれでなじみのある文字を使って記録・伝承されており、ローマ字(基本ラテン・アルファベット21字 a b c d e g h i j k l m n o p r s t u v y 単独または組み合わせに加え、符号つきアルファベット11字 ā ī ū ṭ ḍ ḷ ṅ ñ ṇ ṁまたはṃ を用いた)表記は、西洋のみならず日本でも最も一般的に使われています。
 以下の記事は、主に、これら符号つきアルファベットをどうやってパソコン等で入力するのかについて書いています(それゆえパーリ語限定の話というわけではありません。ドイツ語のウムラウト(ä,ö,ü)、フランス語のアクサン記号付きの文字(アクサン・テギュの付いたé、アクサン・グラーヴの付いたè,à,ù、アクサン・シルコンフレックスの付いたâ,ê,î,ô,û)なども、下記と似たやり方で入力できます。ただし、対応フォントは大きく異なります)。
 (参考文献:町田和彦編『図説 世界の文字とことば』河出書房新社・2009年、水野弘元著『パーリ語文法』山喜房佛書林・1955年)

(2018/02初版作成、2019/07大幅加筆)

 

■ 使用機器・環境別の読む順序

  • パソコンに、Microsoft OfficeのワープロソフトWordや、無料のLibreOfficeのワープロソフトWriterがインストールされている場合は、手順1→3→4→5と進んでください。一方、それらWordWriterがインストールされていない場合は、手順2→3→4→5と進んでください。
  • パソコンを使うが「操作が苦手だし、なるべくなら長い説明は読みたくない」「理屈よりも手っ取り早く実現させたい」という方や、手順12でうまくいかなかった場合は、手順3→4→5と進んでください。
  • タブレット・スマホを使う場合は、手順12は無関係ですので、手順3→4→5と進んでください。

 

 ※感謝と弁明:勉強会で学びを共にする方々からのご相談や成功報告に深く感謝申し上げます。この記事が以前より充実したものになっているとすれば、皆様のおかげです。とはいえ、誤りはすべて執筆担当者の責任です。MacLinuxをほぼまともに使ったことがなく、タブレット・スマホもあまり使っておりませんので、これらに関しては、教えてくださった方からの情報の他には、ネット情報、短時間触っただけの経験と推測で書いている部分が多く、さまざまな説明不足や間違いがあるかもしれないことをお断りしておきます。

 

■ 手順1(パソコンにWordやWriterがインストールされている場合)

(注:それぞれWindows版で実験しましたのでそれにもとづいて説明しますが、おそらくMac版のWordMac版・Linux版のWriterでも同様だろうと推測します。

 (1).Wordの画面では、[挿入]タブ-[記号と特殊文字]-[その他の記号]を順にクリックしていきます。Writerの画面では、「挿入」メニューから「記号と特殊文字」をクリックします。

 (2).Wordの場合、出てきたウィンドウ内で、「コード体系」をUnicode16進)にし、「フォント」をTimes New Romanなどにします。Writerの場合、出てきたウィンドウ内で、「フォント」をTimes New Romanなどにします。(フォントの選択については手順3を参照してください。)

 (3).そして、Wordの場合、「種類」を「ラテン拡張A」にすれば、āīū が、「ラテン拡張追加」にすれば、ṭ、ḍ、ḷ、ṅ、ṇ、ṁ、ṃ が、「ラテン1補助」にすれば、ñ が、それぞれ一覧の中にありますので、それぞれの文字を選んで、[挿入]ボタンをクリックします。Writerの場合は、「サブセット」を「ラテン拡張文字A」にすれば、āīū が、「ラテン拡張文字追補」にすれば、ṭ、ḍ、ḷ、ṅ、ṇ、ṁ、ṃ が、「ラテン文字1」にすれば、ñ が、それぞれ一覧の中にありますので、それぞれの文字を選んで、[挿入]ボタンをクリックします。各大文字も同様です。

 それでは、次に、手順3へ進んでください。

 

■ 手順2(パソコンにWordやWriterがインストールされていない場合:WindowsかMacで)

▼【Windowsの場合】

 (0).Windowsに標準で入っているMicrosoft-IME(以下MS-IMEと略す)またはATOKを使いますので、現在Google日本語入力など他のものをメインの日本語入力システム(IME)にしている場合は、事前に、MS-IMEまたはATOKに切り替えておいてください(これは一時的で構いません。ここの(3)まで終わったら、元に戻してください)。切り替えの仕方は、Windowsキーを押さえながらスペースキーです。

 (1).「メモ帳」や「ワードパッド」などの新規作成画面(ワープロソフトでもメーラーでも、文字が打てればたいていどのソフトでも可)を出しておいて、MS-IMEなら、その言語バー内の「ツール」をクリックし、「IMEパッド」をクリックします。ATOKなら、その言語バー内の「メニュー」をクリックし、「文字パレット」をクリックします。

 (2).次に、MS-IMEの場合は、出てきたIMEパッドの画面にて、左側メニューで「文字一覧」を選び、「Unicode(基本多言語面)」というフォルダが展開していることを確認し、フォントをTimes New Romanなどにします。ATOKの場合は、出てきたATOK文字パレットの画面で、「Unicode表」のタブに切り替え、フォントをTimes New Romanなどにします。(フォントの選択については手順3を参照してください。)

 (3).そして、MS-IMEの場合は「Unicode」のところを、ATOKの場合は「見出し」のところを、「ラテン文字拡張A」に切り替えれば、āīū が、「ラテン文字拡張追加」に切り替えれば、ṭ、ḍ、ḷ、ṅ、ṇ、ṁ、ṃ が、「ラテン1補助」に切り替えれば、ñ が、それぞれ一覧の中にありますので、それぞれの文字を選んで、[挿入]ボタンをクリックします。各大文字も同様です。なお、IMEパッドやATOK文字パレットのウィンドウは、なるべく大きくしておいたほうが、文字を探しやすいと思います。

 それでは、次に、手順3へ進んでください。

 

▼【Macの場合】

 (1).「テキストエディット」(Dock内の「Launchpad「その他」にあり)や「Pages」(Dock内にあり)の新規作成画面(ワープロソフトでもメーラーでも、文字が打てればたいていどのソフトでも可)を出したら、メニューバーの右の方にある、「A」や「あ」などと表示されている文字入力のアイコンをクリックし、「文字ビューア」あるいは「絵文字と記号を表示」をクリックします。(なお、古いMac の場合で、もし「文字ビューア」というメニューが表示されていなければ、まず先に「"日本語"環境設定を開く」をクリックし、「メニューバーにキーボードビューアと絵文字ビューアを表示」にチェックしておきます。または、システム環境設定アプリから、「キーボード」→「キーボード」タブにある「メニューバーにキーボードビューアと文字ビューアを表示」にチェックを入れておきます。)

 (2).こうして出した画面で、左側メニューに「ラテン文字」または「分音符付きラテン」というカテゴリがあれば、それを選びます。Yosemite以降の新しいMacの場合は、左上の歯車マークをクリックして、「リストをカスタマイズ…」をクリックし、「ヨーロッパアルファベット」の中の「ラテン文字」にチェックを入れて「完了」をクリックしてから、左側メニュー内にできた「ラテン文字」というカテゴリを選びます。

 (3).そして、その「分音符付きラテン」カテゴリ、または、「ラテン文字」カテゴリ内の下部にある「分音符付きラテン文字」のなかから、āīū、ṭ、ḍ、ḷ、ṅ、ṇ、ṁ、ṃ、ñ を探し、それぞれの文字を選びます。各大文字も同様です。Macの場合、アルファベット順なので探しやすいと思います。

 それでは、次に、手順3へ進んでください。

 

(もしも、手順12の憶測的な記述に誤りがあって「見つからず、入力できない」という場合、申し訳ございませんが、どうか諦めず、代替策として手順3→4→5と試して頂ければ実現可能と思いますので、よろしくお願いします。)

 

■ 手順3 フォント(書体)の選択について

 ※ 上記の手順1または2の結果、パーリ語に必要な符号つきアルファベットのみが文字化けする状態になっている場合には、ぜひ、こちらの手順3をお読みいただき、各ソフト・アプリにおいて、フォントの変更を試みてください。

 ※ 一方、いま特に表示に問題がない場合は、ここは、手順というよりも、後々、好みに応じてフォントを変更しようと思った際に必要になる情報だと捉えていただき、今は、参考程度に軽くお読みいただければと思います。

 ※ そもそも手順12を飛ばしてここに来られた場合や、手順12でうまくいかなかった場合は、今は、ここは軽く読んでおき、手順5まで終わりましたら、その際に文字化けがないかどうかを確認し、もし不具合があれば、改めてこの手順3をお読みいただき、各ソフト・アプリにおいて、フォントの変更を試みてください。

 

 さて、パーリ語ローマ字表記に適しているフォントというのは、個人的には、例えば、aと、āaの部分、nと、ṅやñやṇのnの部分などが同じに(違和感なく)見えるフォントだと思います。これは言い換えますと、そのフォントの中に、Unicodeという文字コードのBasic Latin(基本ラテン)にあたる字形だけでなく、Latin-1 Supplement(ラテン文字1補助)、Latin Extended-A(ラテン文字拡張A、ラテン拡張文字A)、Latin Extended Additional(ラテン文字拡張追加、ラテン拡張文字追補)というカテゴリに該当する字形を多く収録していて、上記のパーリ語ローマ字表記に必要な符号つきアルファベットの字形をもれなく収録している欧文フォントだということになります。

 

 ちなみに、上記の手順12で説明したとおり、āīū は「Latin Extended-A」に属し、ṭ、ḍ、ḷ、ṅ、ṇ、ṁ、ṃ は「Latin Extended Additional」に属し、ñ は「Latin-1 Supplement」に属します。ついでに参考までにメモしますと、āなどは「Latin Small Letter ○ with Macron」、ṭなどは「Latin Small Letter ○ with Dot Below」、ṅなどは「Latin Small Letter ○ with Dot Above」、ñは「Latin Small Letter N with Tilde」と言います。

 

 パソコンで何十種類かのフォントを試してみたところ、Unicode対応欧文フォントのすべてが、符号つきアルファベットのすべての字形を収録しているとは限らないことがわかりました。条件を満たすフォントはかなり限定されるとお考えください。そのうち、標準でパソコンに搭載されている可能性の高い、有名どころの例をあげてみますと、セリフフォント(和文フォントの明朝体などに対応する、どちらかと言うと本文用、印刷用途)なら、Times New RomanTimesCambriaMicrosoft SerifEbrimaなど、サンセリフフォント(和文フォントのゴシック体に対応する、どちらかと言うと見出し用、画面表示用途)なら、ArialCalibriMicrosoft Sans SerifSegoe UITahomaHelveticaOsakaMenloなどが該当します。

 

 無料でダウンロードできるフォントでも、条件を満たすものがいくつかあります(GoogleNoto SerifNoto Sansなど)。興味ある方は、シミュレーションできるサイトで色々試して、条件を満たす、お好みのフォントをお探しください。例えば、Google Fontshttps://fonts.google.com/)で、Customの「Type something」と書かれた空欄に、試しに、aāiīuūmṁṃnñtdlAĀIĪUŪMṀṂNÑTDLḶを入れてみて、いわゆる「豆腐」マーク(文字化けを意味する□というマーク)が一つもなく、すべての字形が違和感なく表示されている状態が確認できれば、それは使えるフォントだと分かります。

 

 スマホの場合、OSのバージョンや機器メーカーによって、標準フォントが異なるようです。今このブログ記事をスマホでご覧になっていて、aāiīuūmṁṃnṇñṅtṭdḍlḷAĀIĪUŪMṀṂNṆÑṄTṬDḌLḶが文字化けなく表示されていれば問題ありませんのでフォントの変更は必要ないということになります。

 

 それでは、次に、手順4へ進んでください。

 

■ 手順4

 上記13の作業は、パソコン向けの情報で、しかも、説明的な手順であり、毎回行うのは面倒であり、現実的ではないと思います。ということで、ここからは、パソコン、タブレット・スマホすべてにあてはまる現実的な方法と最後の手順を書きます。次の2通りあります。

 

  • 方法A : どこかのファイルにāīūṁṃṇñṅṭḍḷĀĪŪṀṂṆÑṄṬḌḶを保存しておいて、その都度コピー&ペーストする、という方法です。このやり方で良いという人には、これ以上説明は不要だと思いますので、ここで話は終了です。次の方法Bが「難しい」、「試してみたけど、自分の機器ではうまくいかなかった」という場合は、こちらの方法でやってください。

 

  • 方法B : āīūṁṃṇñṅṭḍḷĀĪŪṀṂṆÑṄṬḌḶを一字ずつ、日本語変換入力システムやユーザー辞書に、覚えやすい便宜的な「よみ」を付けて単語登録しておいて(例えば、āなら「あー」などと付けて登録して)、漢字変換と同様の要領で出す、という方法です。個人的には、いちど手間をかけておけば後々楽なこちらの方法をお勧めします。次の手順5で、機器ごとにやり方を説明しますので、進んでください。

 

■ 手順5

 下記の各▼印で機器・環境別に書いていますが、ひと言で言えば、単語登録方法の説明を書いています。説明の重複を避けるため、先頭の【Windows MS-IMEの場合】以外の説明文には、(以下同上)という形で文章を省略している部分がありますので、機器の種類にかかわらず、皆様全員、先頭の【Windows MS-IMEの場合】の説明文をあらかじめ読んでから、機器別の内容へお進みください。

 なお、手順12を飛ばして来られた方は、今からこのブログ画面上で、右記の文字列(āīūṁṃṇñṅṭḍḷĀĪŪṀṂṆÑṄṬḌḶ)を丸ごとまたは一字ずつ範囲選択・コピーしていただく必要があります。 

(備考:このブログ記事を見ているブラウザから「āīūṁṃṇñṅṭḍḷĀĪŪṀṂṆÑṄṬḌḶ」を一つずつコピーしても全く問題ありませんが、いったんどこかに貼り付けておき、(ブラウザを閉じ、ネット回線を切断してから)後でゆっくり作業しようという場合は、仮の保存・作業場所として、標準で入っている、簡易的な文章編集ソフト・アプリが十分その役目を果たします。Windowsなら「メモ帳」や「ワードパッド」、Macなら「テキストエディット」や「Pages」、iPhone,iPadなら「メモ App」、Androidなら「メモ帳」などです。)

 

▼【Windows MS-IMEの場合】

 タスクバー右の方の言語バー、または、通知領域内の「A」や「あ」というマークを右クリックし、そのMS-IMEのメニュー内の「単語の登録」をクリックして、単語登録画面を出します(Windows10ですと標準で言語バーがないそうですので、その場合は、[Ctrl]キーを押さえながら[F7]キーで単語登録画面を出します)。

 そして、「単語」のところに「ā」を貼り付け(なお、最初に「ā」を範囲選択してから単語登録画面を出せば、すでに入力済みになっています)、「よみ」のところに、例えば「あー」など、自分が覚えやすい便宜的な読み方(ひらがなで2字以上にしておくのが無難です)を入れ、「登録」ボタンをクリックします。おそらく、品詞は何でもいいと思います。これで次からは、文字入力が出来るたいていのソフトで、「あー」と打って、変換操作をすれば、「ā」が変換候補に出てきて、入力することができます。

 これを他の文字(īūṁṃṇñṅṭḍḷĀĪŪṀṂṆÑṄṬḌḶ)についても一字ずつ同様に行っておけばよいわけです。

 他の字の読みの無難な例を示しますと、次の通りです。「ī」は「いー」、「ū」は「うー」、「」や「」は両方とも*「えむ」、「」「ñ」「」は3つとも*「えぬ」、「」は「てぃ」、「」は「でぃ」、「」は「える」。大文字も同じ*読みで大丈夫です。 * 読みが重複していても大丈夫です。変更候補のなかから選んで入力できます。

 

▼【Windows ATOKの場合】

 ATOKバーのメニューから「単語登録」をクリックしますと(または、[Ctrl]+[F7]で)、「ATOK 単語登録」の画面が出ますので、「単語」欄に「ā」を貼り付け(上と同様、最初に「ā」を範囲選択してから画面を出せば、すでにāが入力済み)、「読み」欄に「あー」などを入れます(なお、WindowsATOKでのみ、全角英字1字で読みを登録してもOKであることを確認しております。例えば、単語が「ṁ」で、読みが「m」としても、ちゃんと変換・入力できます。他のOSや環境下ではほぼNGだと思いますのでご注意ください)。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【Windows Google日本語入力の場合】

 Google日本語入力の言語バーの「ツール」をクリックし、「単語登録」をクリックします。そして、「単語」欄に「ā」を貼り付け、「よみ」欄に「あー」などを入れ、「OK」ボタンをクリックします。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【旧来のMacOSの場合】

 メニューバーの右の方にある、「A」や「あ」などと表示されている文字入力のアイコンをクリックして「単語登録/辞書編集」をクリックしますと、「ことえり単語登録」の画面が出ますので、その画面内にて、上部の「登録」ボタンを押し、単語欄に「ā」を貼り付け、よみ欄に「あー」など(必ずひらがなで2字以上)を入れます。下部の「登録」ボタンを押します。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【Yosemite以降のMacOSの場合】

 メニューバーの右の方にある、「A」や「あ」などと表示されている文字入力のアイコンをクリックして「ユーザ辞書を編集」をクリックすると、「キーボード」の「ユーザー辞書」が開きますので、そこの左下「+」ボタンをクリックし、「変換」欄に「ā」を貼り付け、「入力」欄に「あー」など(必ずひらがなで2字以上)を入れます。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【iPhoneiPadの場合】

 「設定」アプリ→「一般」→「キーボード」→「ユーザ辞書」とタップしていきます。そして、「+」ボタンをタップし、「単語」欄に「ā」を貼り付け、「よみ」欄に「あー」など(必ずひらがなで2字以上)を入れ、「保存」をタップします。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【Android Google日本語入力の場合】

 「設定」アプリ→「言語と入力」→「Google日本語入力」「辞書ツール」とタップしていきます。「+」をタップし、「単語」欄に「ā」を貼り付け、「よみ」欄に「あー」を入れます。これで次からは……(以下同上)。

 

▼【Android ATOKの場合】

 「ATOK」アプリ「ユーザー辞書編集」をタップします。右上のメニューをタップして「新規登録」をタップします。「単語」欄に「ā」を貼り付け、「読み」欄に「あー」を入れ、「登録」をタップします。これで次からは……(以下同上)。

 

ご覧くださり、ありがとうございました。ご参考になれば幸いに存じます。
お幸せでありますように。生きとし生けるものが幸せでありますように。

(文責:脇坂)

パーリ語のローマ字とカナ読み

【パーリ語のローマ字とカナ読み

読みのカナが振られていないパーリ語の単語や文章を見たときに、それを声に出して読んでみたい、または、どういう法則でカナが振られているのか知りたい、と思った方のために、パーリ語のローマ字とカナ読みについての説明文を書いてみました。
  日本語的なカタカナ発音レベルで書いておりますので、理解不足でおかしいところや誤りもあるかもしれないということをあらかじめお断り申し上げます。今後、勉強しながら、随時、修正していきます。

備考:スマホの場合、画面を横向きにしてご覧ください。

 ローマ字と辞書での配列順

まずはじめに前提知識として、パーリ語で用いるローマ字と辞書での配列順を説明します。
  全部で
41音あり、配列順は、1.母音、2.ṁも同じ)、3.kの仲間の子音、4.cの仲間の子音、5.ṭの仲間の子音、6.tの仲間の子音、7.pの仲間の子音、8.その他の子音という順です。
  それでは、下の表を見て頂きながら、グループ別に説明します。

                                                                                                                                               
 

a

 
 

ā

 
 

i

 
 

ī

 
 

u

 
 

ū

 
 

e

 
 

o

 
 

(ṁ)

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

k

 
 

kh

 
 

g

 
 

gh

 
 

(ṅ)

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

c

 
 

ch

 
 

j

 
 

jh

 
 

ñ

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 
 

ṭh

 
 

 
 

(ḍh)

 
 

(ṇ)

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

t

 
 

th

 
 

d

 
 

dh

 
 

n

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

p

 
 

ph

 
 

b

 
 

bh

 
 

m

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

y

 
 

r

 
 

l

 
 

()

 
 

v

 
 

s

 
 

h

 
 

 

 

 

表1行目、母音は8音あり、アイウエオ順です。
  ただし、例えば、普通の
aと、長音記号( ˉ )が付いたāのように、短い音と長い音とで字が区別されている場合は、短いほうが先で、長いほうが後です。すなわち、aではじまる見出し語すべて終わってから、区切りがあって、新しく、āではじまる見出し語が並ぶということです。
  なお、辞書にて、例えば、語中の
aの上に長音記号( ˉ )と短音記号(˘)の混合記号(⏓)がついた字体になっている場合は、aの場合もāの場合もある(後述するように、アと読むこともアーと読むこともある)ということを表しています。

2行目、も同じ。専門用語で抑制音というそうです)について。
  これが語頭に来る単語はありません
*が、語中や語尾には出てきます。その場合の順序として、母音より後ろ、他の子音よりも前になります。例えば、sではじまる見出し語は、sasa-uttarasa-upādisesasaṁsaṁyata saṁhīratisaka … といった順になっています。

* なお、これと同様に、表の中で丸括弧で囲った音は、その音が語頭に来る単語はない(少なくとも水野弘元先生の『増補改訂パーリ語辞典』には掲載されていない)ということを表しています。

表3行目以下の子音については、kからmまでの25音の各行は、おおむね、口の中の後方(喉に近いほう)で作る音から、口の前方(唇付近)で作る音へ、という順序だと覚えるといいと思います。
  専門用語も参考程度に書いてみますと、
kではじまる行が喉音、cではじまる行が口蓋音、ではじまる行が反舌音、tではじまる行が歯音、pではじまる行が唇音というグループ名で、これらを五群というそうです。
  なお、この五群の2列目と4列目に、それぞれ後ろに
hがつく音(専門用語で含気音というそうです)が計10音ありますが、これらは一体で(つまり、例えばkhで)一音です。なので例えば、kではじまる見出し語がすべて終わってから、区切りがあって、新しく、khではじまる見出し語が、khakhaggakhacita…と並ぶことになります。

最終行、yではじまる行は、上記以外の子音いろいろ7音です。
  これらは専門的には、喉音の
h、口蓋音のy、反舌音のr、歯音のls、唇音のvと分けられるそうですが、実際のy r l ḷ v s hという並びは、そうした分類順のとおりではないので、私は理屈で覚えるのはあきらめました。語呂合わせで強引に覚えています。

 

 読み方(カナ的発音の仕方)

パーリ語の単語のローマ字表記の綴りを見てみると、その構成要素は、母音単独子音+母音の形が多いように思います。
  以下では、主にそれらについて、ローマ字にカナをふった表を作ってみました。
 (備考:一つの単語内の綴りとして存在しない子音
+母音の形も含まれているかもしれませんが、機械的に表に並べ、カナを振ってみました。)

一方、例外的に、子音単独子音の二連続、まれに子音の三連続もありまして、これらについては、最後のほうで少し、辞書で目にしたよくありそうなものだけ、表にしてみました。

稀なケースを除き、大半の単語は、これら一覧の中からあてはまるものを探してカナをふることができ、とりあえず何とか日本語的な発音ででも読めるのではないかと思います。

 

前述の41音の配列順に進めます。では、まずは、母音単独の読み方。

                               
 

a

 
 

ā

 
 

i

 
 

ī

 
 

u

 
 

ū

 
 

e

 
 

o

 
 

 
 

アー

 
 

 
 

イー

 
 

 
 

ウー

 
 

エー,エ *

 
 

オー,オ *

 

*備考:eoは、原則的には、エー、オーと長く伸ばして読みますが、eoの後ろに同じ子音が二個続くときは、短く(かつ後ろの一個目の子音を小さい「ッ」にして)読みます。例えば、ogha(暴流)はオーガ、oṭṭha(,ラクダ)はオッタと読みます。
なお、あらかじめ書いておきますが、以下すべての、子音+e、子音+oでも同様です。例えば、megha(雨雲)はメーガ、mettā()はメッターと読みます。

 

ここから、五群ごとに。一番目に、kではじまる行(喉音)の子音+母音の読み方。

                               
 

ka

 
 

 
 

ki

 
 

 
 

ku

 
 

 
 

ke

 
 

ko

 
 

 
 

カー

 
 

 
 

キー

 
 

 
 

クー

 
 

ケー,

 
 

コー,

 

 

                               
 

kha

 
 

khā

 
 

khi

 
 

khī

 
 

khu

 
 

khū

 
 

khe

 
 

kho

 
 

 
 

カー

 
 

 
 

キー

 
 

 
 

クー

 
 

ケー,

 
 

コー,

 

注1:細かくいうと、含気音のkhの行は、無気音のkの行よりも息多めで発音するそうですが、発音も聞き取りも難しそうなので、ほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ga

 
 

 
 

gi

 
 

 
 

gu

 
 

 
 

ge

 
 

go

 
 

 
 

ガー

 
 

 
 

ギー

 
 

 
 

グー

 
 

ゲー,

 
 

ゴー,

 

 

                               
 

gha

 
 

ghā

 
 

ghi

 
 

ghī

 
 

ghu

 
 

ghū

 
 

ghe

 
 

gho

 
 

 
 

ガー

 
 

 
 

ギー

 
 

 
 

グー

 
 

ゲー,

 
 

ゴー,

 

上記の注1と同じ理由で、gの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ṅa

 
 

ṅā

 
 

ṅi

 
 

ṅī

 
 

ṅu

 
 

ṅū

 
 

ṅe

 
 

ṅo

 
 

 
 

ナー

 
 

 
 

ニー

 
 

 
 

ヌー

 
 

ネー,

 
 

ノー,

 

 

二番目に、cではじまる行(口蓋音)の子音+母音の読み方。

                               
 

ca

 
 

 
 

ci

 
 

 
 

cu

 
 

 
 

ce

 
 

co

 
 

チャ

 
 

チャー

 
 

 
 

チー

 
 

チュ

 
 

チュー

 
 

チェー,

チェ

 
 

チョー、

チョ

 

 

                               
 

cha

 
 

chā

 
 

chi

 
 

chī

 
 

chu

 
 

chū

 
 

che

 
 

cho

 
 

チャ

 
 

チャー

 
 

 
 

チー

 
 

チュ

 
 

チュー

 
 

チェー,

チェ

 
 

チョー、

チョ

 

上記の注1と同じ理由で、cの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ja

 
 

 
 

ji

 
 

 
 

ju

 
 

 
 

je

 
 

jo

 
 

ジャ

 
 

ジャー

 
 

 
 

ジー

 
 

ジュ

 
 

ジュー

 
 

ジェー,

ジェ

 
 

ジョー、

ジョ

 

 

                               
 

jha

 
 

jhā

 
 

jhi

 
 

jhī

 
 

jhu

 
 

jhū

 
 

jhe

 
 

jho

 
 

ジャ

 
 

ジャー

 
 

 
 

ジー

 
 

ジュ

 
 

ジュー

 
 

ジェー,

ジェ

 
 

ジョー、

ジョ

 

上記の注1と同じ理由で、jの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ña

 
 

ñā

 
 

ñi

 
 

ñī

 
 

ñu

 
 

ñū

 
 

ñe

 
 

ño

 
 

ニャ

 
 

ニャー

 
 

 
 

ニー

 
 

ニュ

 
 

ニュー

 
 

ニェー,

ニェ

 
 

ニョー,

ニョ

 

備考:nの行とは大きく異なるので注意してください。

 

三番目に、ではじまる行(反舌音)の子音+母音の読み方。

                               
 

ṭa

 
 

ṭā

 
 

ṭi

 
 

ṭī

 
 

ṭu

 
 

ṭū

 
 

ṭe

 
 

ṭo

 
 

 
 

ター

 
 

ティ

 
 

ティー

 
 

トゥ

 
 

トゥー

 
 

テー,

 
 

トー,

 

 

                               
 

ṭha

 
 

ṭhā

 
 

ṭhi

 
 

ṭhī

 
 

ṭhu

 
 

ṭhū

 
 

ṭhe

 
 

ṭho

 
 

 
 

ター

 
 

ティ

 
 

ティー

 
 

トゥ

 
 

トゥー

 
 

テー,

 
 

トー,

 

上記の注1と同じ理由で、の行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ḍa

 
 

ḍā

 
 

ḍi

 
 

ḍī

 
 

ḍu

 
 

ḍū

 
 

ḍe

 
 

ḍo

 
 

 
 

ダー

 
 

ディ

 
 

ディー

 
 

ドゥ

 
 

ドゥー

 
 

デー,

 
 

ドー,

 

 

                               
 

ḍha

 
 

ḍhā

 
 

ḍhi

 
 

ḍhī

 
 

ḍhu

 
 

ḍhū

 
 

ḍhe

 
 

ḍho

 
 

 
 

ダー

 
 

ディ

 
 

ディー

 
 

ドゥ

 
 

ドゥー

 
 

デー,

 
 

ドー,

 

上記の注1と同じ理由で、の行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ṇa

 
 

ṇā

 
 

ṇi

 
 

ṇī

 
 

ṇu

 
 

ṇū

 
 

ṇe

 
 

ṇo

 
 

 
 

ナー

 
 

 
 

ニー

 
 

 
 

ヌー

 
 

ネー,

 
 

ノー,

 

注2:細かくいうと、喉音のの行と、反舌音のの行は、舌の位置や形が違うそうですが、発音も聞き取りも難しそうなので、の行とほぼ同じとさせてください

 

四番目に、tではじまる行(歯音)の子音+母音の読み方。

                               
 

ta

 
 

 
 

ti

 
 

 
 

tu

 
 

 
 

te

 
 

to

 
 

 
 

ター

 
 

ティ

 
 

ティー

 
 

トゥ

 
 

トゥー

 
 

テー,

 
 

トー,

 

注3:細かくいうと、反舌音のの行と、歯音のtの行は、舌の位置や形が違うそうですが、発音も聞き取りも難しそうなので、の行とほぼ同じとさせてください

 

                               
 

tha

 
 

thā

 
 

thi

 
 

thī

 
 

thu

 
 

thū

 
 

the

 
 

tho

 
 

 
 

ター

 
 

ティ

 
 

ティー

 
 

トゥ

 
 

トゥー

 
 

テー,

 
 

トー,

 

上記の注3と同じ理由で、ṭhの行とほぼ同じとさせてください。

また、上記の注1と同じ理由で、tの行ともほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

da

 
 

 
 

di

 
 

 
 

du

 
 

 
 

de

 
 

do

 
 

 
 

ダー

 
 

ディ

 
 

ディー

 
 

ドゥ

 
 

ドゥー

 
 

デー,

 
 

ドー,

 

上記の注3と同じ理由で、の行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

dha

 
 

dhā

 
 

dhi

 
 

dhī

 
 

dhu

 
 

dhū

 
 

dhe

 
 

dho

 
 

 
 

ダー

 
 

ディ

 
 

ディー

 
 

ドゥ

 
 

ドゥー

 
 

デー,

 
 

ドー,

 

上記の注3と同じ理由で、ḍhの行とほぼ同じとさせてください。

また、上記の注1と同じ理由で、dの行ともほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

na

 
 

 
 

ni

 
 

 
 

nu

 
 

 
 

ne

 
 

no

 
 

 
 

ナー

 
 

 
 

ニー

 
 

 
 

ヌー

 
 

ネー,

 
 

ノー,

 

上記の注3と同じ理由で、の行とほぼ同じとさせてください。

また、それと同時に、上記の注2と同じ理由で、の行ともほぼ同じとさせてください。

 

五番目に、pではじまる行(唇音)の子音+母音の読み方。

                               
 

pa

 
 

 
 

pi

 
 

 
 

pu

 
 

 
 

pe

 
 

po

 
 

 
 

パー

 
 

 
 

ピー

 
 

 
 

プー

 
 

ペー,

 
 

ポー,

 

 

                               
 

pha

 
 

phā

 
 

phi

 
 

phī

 
 

phu

 
 

phū

 
 

phe

 
 

pho

 
 

 
 

パー

 
 

 
 

ピー

 
 

 
 

プー

 
 

ペー,

 
 

ポー,

 

上記の注1と同じ理由で、pの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ba

 
 

 
 

bi

 
 

 
 

bu

 
 

 
 

be

 
 

bo

 
 

 
 

バー

 
 

 
 

ビー

 
 

 
 

ブー

 
 

ベー,

 
 

ボー,

 

 

                               
 

bha

 
 

bhā

 
 

bhi

 
 

bhī

 
 

bhu

 
 

bhū

 
 

bhe

 
 

bho

 
 

 
 

バー

 
 

 
 

ビー

 
 

 
 

ブー

 
 

ベー,

 
 

ボー,

 

上記の注1と同じ理由で、bの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ma

 
 

 
 

mi

 
 

 
 

mu

 
 

 
 

me

 
 

mo

 
 

 
 

マー

 
 

 
 

ミー

 
 

 
 

ムー

 
 

メー,

 
 

モー,

 

 

ここから、その他の子音+母音の読み方。

                               
 

ya

 
 

 
 

yi

 
 

 
 

yu

 
 

 
 

ye

 
 

yo

 
 

 
 

ヤー

 
 

 
 

イー

 
 

 
 

ユー

 
 

イェー,イェ

 
 

ヨー,

 

 

                               
 

ra

 
 

 
 

ri

 
 

 
 

ru

 
 

 
 

re

 
 

ro

 
 

 
 

ラー

 
 

 
 

リー

 
 

 
 

ルー

 
 

レー,

 
 

ロー,

 

 

                               
 

la

 
 

 
 

li

 
 

 
 

lu

 
 

 
 

le

 
 

lo

 
 

 
 

ラー

 
 

 
 

リー

 
 

 
 

ルー

 
 

レー,

 
 

ロー,

 

注4:当然rlは字がまったく違うので発音も違うのですが、発音も聞き取りも難しそうですし、カナ表記の限界からも、rの行とほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

ḷa

 
 

ḷā

 
 

ḷi

 
 

ḷī

 
 

ḷu

 
 

ḷū

 
 

ḷe

 
 

ḷo

 
 

 
 

ラー

 
 

 
 

リー

 
 

 
 

ルー

 
 

レー,

 
 

ロー,

 

上記の注3と同じ理由で、lの行とほぼ同じとさせてください。

また、上記の注4と同じ理由で、rの行ともほぼ同じとさせてください。

 

                               
 

va

 
 

 
 

vi

 
 

 
 

vu

 
 

 
 

ve

 
 

vo

 
 

ヴァ/

*

 
 

ヴァー/

ワー*

 
 

ヴィ

 
 

ヴィー

 
 

 
 

ヴー

 
 

ヴェー,

ヴェ

 
 

ヴォー,

ヴォ

 

*備考:vaはヴァでもワでもいいし、もヴァーでもワーでもいいと思います。どちらが本来正しいのか分かりませんが、個人的には、よく使われるほうや言い易さで選んだらいいと思っています。例えば、Theravada(上座部)は個人的には、テーラヴァーダよりもテーラワーダのほうが、言い易く感じますし、よく見かけます。当時のインドの十六大国の一つであるVajjīは、ワッジーでもヴァッジーでもいいと思います。

 

                               
 

sa

 
 

 
 

si

 
 

 
 

su

 
 

 
 

se

 
 

so

 
 

 
 

サー

 
 

/

スィ*

 
 

シー/

スィー*

 
 

 
 

スー

 
 

セー,

 
 

ソー,

 

*備考:siはシでもスィでもいいし、もシーでもスィーでもいいと思います。上記のva等と似た言い訳をさせてください。例えば、sikkhā(,訓練)はシッカーでもスィッカーでもいいし、sīla()はシーラでもスィーラでもいいと思います。

 

                               
 

ha

 
 

 
 

hi

 
 

 
 

hu

 
 

 
 

he

 
 

ho

 
 

 
 

ハー

 
 

 
 

ヒー

 
 

 
 

フー

 
 

ヘー,

 
 

ホー,

 

 

最後に、例外的なケース(子音単独、子音の二連続・三連続)について。

                                               
 

後ろに母音がこない場合の

 

t d

 
 

トゥ  ドゥ と読みます。

 
 

例えば、ñatvā(知って)はニャトゥヴァー、tvaṁ(あなた)はトゥヴァン、etad(これ)はエータドゥ、indriya()はインドゥリヤまたはインドゥリャ、dvi()はドゥヴィと読むと思います。

 
 

後ろに母音がこない場合の

 

b y l s

 

(右で個別に説明)

 
 

bはブと読み、braはブラ、brāはブラー、brūはブルー と読みます。

 

例えば、brahma()はブラフマ、brāhmaṇa(婆羅門)はブラーフマナ、brūti(言う)はブルーティと読みます。また、abrahmacārin(非梵行者)はアブラフマチャーリン(アクセントの位置を考慮すると実際にはアッブラフマチャーリン)と読むと思います。

 
 

yはイと読み、yhaはイハ と読みます。

 

例えば、vigayha(入って)は、ヴィガイハと読みます。

 
 

lと読み、lyaルヤと読みます。

 

例えば、kalya(善い)は、カルヤ(実際にはカゥヤ)と読みます。

 
 

lと同様、と読みます。例えば、daḷha(堅固の)ダルハ実際にはダゥハ)、abbūha(抜いた)はアッブールハ(実際にはアッブーラ)、avirūhi(未成長)はアヴィルールヒ(実際にはアヴィルーリ)と読むと思います。

 
 

sはスと読み、svā スワー  スヴァー と読みます。

 

例えば、svākkhāta(よく説かれた)はスワーッカータと読みます。

 
 

子音+y+母音

 

(右で個別に説明)

 
 

byavyaはブヤ(実際にはビャ)、byāvyāはブヤー(実際にはビャー)と読みます。

 

実際には、例えば、byāpādavyāpāda()はビャーパーダと読みます。また、abyāpajjhaavyāpajjha(無瞋の)はアビャーパッジャ(アクセントの位置を考慮するとアッビャーパッジャ)と読むと思います。

 
 

kyakhyaはキャ、gyaはギャ、gyeはギェーと読むと思います。

 

例えば、sakya(釈迦)はサキャ(アクセントの位置を考慮するとサッキャ)、ārogya(無病)はアーローギャと読むと思います。

 
 

後ろに母音がこない場合の

 

)や  や ñ や

 

 や n や m

 
 

すべて、ン と読んでもいいと思います

 

注5:は喉音、ñは口蓋音、は反舌音、nは歯音、mは唇音という分類にもとづく細かい違いがあるかもしれませんが、発声も聞き取りも難しそうですし、カナ表記の限界からも、同じとさせてください。

 
 

例えば、dhamma(,真理)はダンマ、dhaṁsin(無遠慮な)はダンシン、最初の仏弟子Koṇḍaññaはコンダンニャ、sañjanati(生まれる)はサンジャナティ、santa(寂静の)saṇṭha()はサンタと読むと思います。

 
 

同じ子音(上記のṁ ṃ ṅ ñ  n mを除いて)が二個続く場合の


一個目の子音

 
 

すべて、小さい  と読みます。

 
 

例えば、dukkha()はドゥッカ、vipassanā()はヴィパッサナーと読みます。

 
 

yyとなっている場合の

 

一個目の y

 
 

 または、小さい  と読みます。

 
 

例えば、āhuneyya(供食されるべき)はアーフネイヤまたはアーフネッヤ、dakkhiṇeyya(供養されるべき)はダッキネイヤまたはダッキネッヤと読みます。

 
 

後ろに同じ子音が二個続く場合の e o

 

(前述ずみ)

 
 

短く、かつ、後ろの一個目の子音を小さい  と読みます。

 
 

例えば、oṭṭha(,ラクダ)はオッタ、mettā()はメッターと読みます。

 

 

(応用編) 分かれて書かれてある単語と単語でも、そのつなぎ目のところで、発音しやすいように、前語語尾の音と後語語頭の音をくっつけ続けて読んだりすることがあります。下記に少し例を示します。

                                   
 

karaṇīyam atthakusalena

 
 

× カラニーヤン アッタクサレーナ

 
 

 カラニーヤマッタクサレーナ

 
 

idham āhu

 
 

× イダン アーフ

 
 

 イダマーフ

 
 

dukkham iccheyya

 
 

× ドゥッカン イッチェイヤ

 
 

 ドゥッカミッチェイヤ

 
 

maṅgalam uttamaṃ

 
 

× マンガラン ウッタマン

 
 

 マンガラムッタマン

 
 

brahmam etaṁ

 
 

× ブラフマン エータン

 
 

 ブラフマメータン

 
 

yad atītaṃ

 
 

× ヤドゥ アティータン

 
 

 ヤダティータン

 

なお、この他、結合で音が変化する(綴り字が減ったり増えたり、別の字に変わったりする)こともありますが(これを連声といいます)(例えばna atthi natthiでナッティと読む)、その説明や例示は膨大になるので、省略させてください。

 

ご覧くださり、ありがとうございました。ご参考になれば幸いに存じます。
お幸せでありますように。生きとし生けるものが幸せでありますように。

(文責:脇坂)